海岸隆起量調査 第2報


 平成19年4月14,および20日に,地殻の隆起量再調査を行い、また隆起量の再計算を行いました。地殻の上下変動は赤住地区と皆月地区との間に見られ,赤神地区では最大約46 cmの隆起が観察されました.一方,深見地区では約5 cmの沈降が確認されました.この結果を基に断層モデルを推定しました。


 写真1.2007年2月(能登半島地震発生前)に撮影された門前町大泊の岩礁.輪島市門前町・中野谷氏提供.


 写真2.2007年4月3日に撮影された門前町大泊の岩礁.画面左奥の小さな岩礁(赤矢印)及び画面手前の岩礁(黄緑矢印)が,地震前(写真1)より大きく海面上に露出している.


 写真3.2007年4月30日に撮影された門前町大泊の岩礁.地震前までは高潮位線以深にあった部分に生息していた生物の遺骸が地震後に露出し,現在ではその遺骸が白色の帯状に分布している.

 図1.岩礁海岸における生物の普遍的帯状分布パターン(ラファエリ・ホーキンズ,1999を改変).図2のA,B,Cはそれぞれ本図の潮下帯上縁部/中潮間帯,中潮間帯/潮上帯下縁部,潮上帯下縁部/潮上帯境界に相当する.

 図2.海岸線隆起量の測定結果.潮間帯上部に生息するカキ・アオサ類の現在の高潮位線からの高さ.潮下帯生物であるアラメ・ホンダワラの標高には30 cmを加え,潮上帯生物である地衣類・シアノバクテリアの標高からは20 cmを減じ,潮間帯生物の高さに基準化した.断層モデルによる隆起量予測値は図4の黄四角に示す地点(隆起量観測地点)での値である.

 図3. 表1の断層パラメーターに基づく理論隆起量。赤線は+(隆起)、青線はー(沈降)を表す(単位はcm)。本震後6時間の余震分布を○で示す。黄四角は本研究での隆起量調査地点を示す。本研究で推定された断層モデルは、余震分布ととてもよく一致しています。

 表1.本研究による地殻隆起量と国土地理院GPS観測による地殻変動データから推定した断層パラメーター.(プログラム提供:国土地理院 西村卓也博士)