船上にてpart2

ここでは湖沼堆積物に関する実習について紹介します。

 
                         
  その2)湖沼堆積物採取

今回主に採泥を行ってくれたのは、船員さんとは別に、陸水学研究所の研究員であるエディックさんという方であった。彼がすべて準備から採取まですべて行ってくれたため、我々は横で見ているしかできなかった。もちろん写真はばっちり抑えているが…。今回用いたサンプラーは、日本で柏谷研が使用している重力式のものと似ていて、それよりさらに重いおもりが備わっているようであった。
我々の航海のリーダー・エディックと,通訳のアリーナ。 重力式の採泥機
                 

 

コアチューブは約1mのものをまず使用し、径は○○cmであった。サンプラーをワイヤーにつなぎ、サンプラーの重力にまかせて一気に湖底に向かって落下させた。当初、下ろして引き上げるのに1〜2時間かかると言われていたので、その間採水などをして先生方のレクチャーをゆっくり聞いていようかと思っていたら、下ろしてから5分もしくは10分も経ってないうちに湖底に着いたらしく、さらに10分後にはもう湖面にまで上がってきていた。なんだ、これなら作業もすぐ終わらせられるんじゃないかと思っていたら、どうしたらこんな風に絡まることができるんだと言いたくなるくらいサンプラーにワイヤーが絡まってしまってた。

この状態では、コアチューブを取り外すことは難しく、また正常にサンプラーが湖底にまっすぐ刺さったかどうかも疑わしいので、まず絡まったワイヤーを解き、それからコアチューブを外した。その際に、サンプラー全体が横たわってしまったので、採取された堆積物の層序(主に表層)が乱れてしまったようであった。

       
           
                   
  そこで、もう一度堆積物を採取してもらうことになった。2度の失敗を避けるためにロシア人船員(太ったおっさん写真)はどのような対応をしたのかは不明だが、今度はなんとか30cm程度の堆積物を採取することに成功した(写真7)。採られたコアはなるべく横に倒さないようにして、下からスポンジのようなものを押し込み、堆積物が下に落ちないようにした。それから、その場で堆積物の上、すなわち湖底付近の水を採取し、水質を測定した。なんとか1本目が採取できて良かったと周囲に安堵感が生まれていたが、ロシア人、特にエディックさんは納得いってなかったようで、もう一本同じ場所でチャレンジしてみないかと言われた。どうも思ったより短かった(堆積物の長さ)らしい。そして3度目のトライをしてみたが、今度はまったく堆積物が入っておらず、水もすべて抜けてしまっていた。というのも、この付近の堆積物は、タービダイトの影響によって比較的粗い層が含まれており、固結度が低かったようである。柱状コアを採取する際に、砂のような堆積物が含まれていると引き上げる時に比較的容易に抜け落ちてしまいやすいようである。また、3度目に使用したコアチューブの径がそれまで使用していたコアチューブの径よりも大きく、堆積物の自重によって落ちて行きやすいため、採取に失敗してしまったのではないかと思われる。この地点での堆積物採取はこれ以上無理だと判断され、作業が打ち切られた。ちなみにここでの作業が終了した時間は、午後8時半頃であった。              
 

その3)湖沼堆積物の処理実習

試料採集地点から次の地点へ移動する時,日本に戻ってから行う分析に備え,湖沼堆積物を処理する実習を行った。作業は7〜8人で、船のほぼ中央にある実験室にて行われた。

右はコアをきる山本先生。コア切りに非凡な才能を発揮した。

     
         
まずコアチューブを支えながらぴったり1cm押し出す人が一人いて それをへらのようなもの(特に名前はない)でスライスする人が一人 堆積物の磁化率を測定するためのキューブ(1cmの立方体)に詰め込む人が一人

 

そしてそれぞれをサポートする人たちが一人ずついて、最後に堆積物の特徴(硬さや色など)を記載する人が一人といった具合に作業が分担されていた。1cm毎にスライスされたサンプルは、Autoclave Bagと呼ばれる耐熱性の袋に入れられた。今回は堆積物の輸入にあたって空港の検疫にて110℃で20分間の加熱殺菌をしなければならない。そのため、普通使用するチャック付ポリ袋では溶けてしまうので、このような袋を使用する。

コアチューブを支えて1cm毎に押し出す係とそれをスライスする係は、それぞれちょっとしたコツのいる作業で、まずは金沢大の柏谷研のメンバーが手本を見せることになった。コア自体の長さが30cm程度ということもあり、詳しい作業時間は覚えていないが2時間もかからず終わったと思う。
 
 

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