目的

 

本国際会議は湖沼堆積物(バイカル湖,琵琶湖,古カトマンズ湖など)や風成堆積物(中国黄土高原)を用いた研究によって得られた陸域のプロセスに関する知識,情報を交換・共有し,東ユーラシアの長期環境変動について理解することを目的としている。

バイカル湖は東シベリアに位置する構造湖である。その形成は3千万年前にまで遡ることができ,更新世には湖が一年中完全に氷に覆われるということがなかったため,少なくとも過去1千万年の連続した堆積物を擁する。堆積物の特徴は日射量変動を反映しているため,過去の長期環境変動についての貴重な情報を得ることができる。


中国北部とくに黄土高原には黄土堆積物(レス)が広く分布しており,アジアモンスーン下での長期気候変動に関する情報をよく保持している。レスの堆積は,北半球における氷河形成・拡大と時を同じくして(約2百70万年前)始まったとする説 や,更に起原は古く7百から2千2百万年前にまで遡れるとする説があり,その研究動向が注目される。


これら中緯度地域に分布する研究調査地域は偏西風や東アジアモンスーン気候の影響を受けているため,各地域の気候・環境変動はお互い関連を持つものと考えられる。更には例えば極地域の降雪量や氷床量,熱帯地域の海洋水の温度など,遠隔地における気候要素変動の影響も大気循環により反映している可能性がある。


さらに東アジアの縁辺部に位置する琵琶湖は50万年,最長でおそらく500万年程度の歴史記録を保持している。チベット高原の南縁部の古カトマンズ湖も過去250万年最長で500万年の記録が期待できる。これらの湖からもたらされる,東ユーラシア地域のモンスーン気候の変化を反映する過去の環境に関する高精度の情報も,長期変動の理解には重要となる。


本国際会議では東ユーラシアにおける陸域の環境変動に関する情報を系統的・包括的に照らし合わせ,さらには地球規模の環境変動の理解に役立てることを目的をしている。


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