Island Arc 編集長就任に当たって

 

2004年1月1日からSimon Wallis氏(名古屋大学)と私がIsland Arc誌の編集長に就任いたしました.
以下は地質学会ニュースに印刷された私のあいさつです.

 

2年間の任期を2期勤め,2007年12月31日にSimon Wallis氏と私はIsland Arc誌の編集委員長を

退任いたしました.在任中の皆様のご支援に感謝します.新委員長は前川寛和氏と井龍康文氏です.

 

"The Island Arc" から "Island Arc" への変更について(2006年3月)  古い表紙と新しい表紙の写真

 

[金沢大学理学部地球学科] [石渡研究室] [石渡ページ]  

 

Blackwell  Island Arc 日本地質学会 アイランドアーク


 

 

 Island Arcは今年で13年目を迎え,初代の平 朝彦氏・小松正幸氏,二代目の小川勇二郎氏・巽 好幸氏に続き,我々が三代目の編集長に就任することになりました.世間ではよく,一代目が築き,二代目が守り,三代目が潰すと申しますが,そうならないよう,そしてIsland Arc誌を質・量ともにますます発展させるよう,編集実務担当の渡部芳夫氏(2005年9月から角替敏昭氏に交代)・竹内圭史氏や一新される編集委員の方々と協力しながらがんばる所存です.

 

 Island Arcは,その表紙に明記されている通り,日本地質学会の公式英文誌であり,日本第四紀学会,日本岩石鉱物鉱床学会,日本古生物学会,そして資源地質学会の協力のもとに,オーストラリアのブラックウェル社から発行されています.この雑誌の編集方針は各号の見開きに印刷されており,そこには,「西太平洋沿岸,アジア,そして世界各地で発展しつつある地球科学研究に対して,迅速かつ国際的な高レベルの出版の機会を提供する.現在及び過去の海溝,島弧,陸弧,背弧海盆,そして衝突帯を含むプレート収束域の構造,運動,進化に焦点を当てる.(中略)本誌はこれら重要な地球科学的対象についての高い学術レベルと広い国際的認知に裏付けられた研究発表と議論の場になることを目指す」と書かれております.アジア地域の地球科学を標榜する国際学術誌は他にもあり,現在Island Arcのレベルがそれらの中でトップというわけではありませんが,今後はIsland Arc(暗に日本を指す)だけでなく,海洋性島弧やその周辺の海洋底,陸弧やその周辺の大陸地域など,広くIsland Arcsを包含する「沈み込み帯域学」の総合誌として発展させていきたいと考えます.更に国際的な認知度を上げて世界各国からの投稿を促すべく,2004IGCフィレンツェ大会などの国際学会で宣伝に努めます.

 

 地質学会会員の皆様には,是非ともご研究の成果を完成度の高い英語論文として積極的にIsland Arcへご投稿いただきますよう,また国内・国外のご友人に投稿をお勧めいただきますようお願いいたします.本誌は原著論文だけでなく総説も歓迎いたします.ただし,刷り上り15ページを限度とし,超過分は1ページ\15,000が課されます.投稿から出版までの査読・編集に通常8ヶ月以上の時間をいただきますが,速報価値のある論文は4ヶ月後に出版できるよう努めます.全ての投稿論文は当該分野の専門家2名以上が査読することになっておりますので,会員の皆様にはどうか査読にもご協力下さい.そして何よりも,地質学会会員はIsland Arcの論文をオンラインで自由にダウンロードできますので,是非このサービスをご利用下さい.私はこれまで5年ほど地質学雑誌の編集委員を勤めて参りましたので,学術雑誌の編集の仕事がどれだけ大変なものかよく存じております.地質学会会員の皆様の暖かいご協力を切にお願い申し上げます.

(石渡 明)


 

Island Arc誌に関するいくつかの重要な変更について

 第15巻1号(2006年3月)から,日本地質学会の公式英文誌,"Island Arc" (Blackwellから出版)が大きく変わります.まず,表紙の図案が一新されます(下記説明参照).新しい表紙は,従来のやや古風な沈み込み帯の断面図から,全地球的なマントル・トモグラフィーの図案に変更されます.これは,地球科学の最近の著しい進歩を反映するとともに,Island Arc誌が全地球を対象とすることを読者に印象づけるものです.


 次に,雑誌の題名から"The"が消え,単に"Island Arc"となります.これは,この雑誌が取り扱う分野の広がりを反映し,「特定の島弧(日本)を主な対象とする雑誌」という印象を払拭するとともに,大幅な雑誌名の変更に伴う不利益(例えばインパクト・ファクターなどへの)を最小限に食い止めるギリギリの選択です.


 雑誌が取り扱う分野については,最近の地球科学の全体的な傾向を反映して,固体地球と水圏・気圏との相互作用を扱う分野も含めるように変更されます.また,従来の研究論文,総説,討論に加えて,地質学雑誌と同様に口絵も掲載されます(皆様のご投稿をお待ちします!).そして,より完全なデータと深く詳しい議論を備えた論文の投稿を促すために,ページ制限を従来の15ページから20ページに緩和します.特に総説については,編集委員長2名の裁可があれば,もっと長くても超過料金なしの掲載を可とすることとしました.


 Island Arc誌はアジア太平洋地域およびプレート収束境界地域の地球科学の専門誌としての強みをこれからも持ち続けます.私たちは,今回の本誌のいくつかの重要な変更が,読者と著者の双方にとって利益になることを願うとともに,この雑誌を更に発展させるべく編集に尽力されている方々のお役に立ち,結果として質の高い論文が多く出版されることとなって,地球科学全体の発達につながることを,心から願うものです.

Island Arcの新しい表紙の図案について

 新しい表紙の図案は,島弧を通る2本の地球断面に沿う地震波トモグラフィーです.青い部分は地震波の高速度域(低温域)を,赤い部分は低速度域(高温域)を表し,マントル最下部(核の直上)における速度分布も内側の球(核)の上に示されています.断面の位置を示すために地表の地形が部分的にカラーで示され,核の表面には大陸や島の分布が線画で投影されています.この科学的で芸術的な断面図には,太平洋プレートの沈み込みスラブ,核・マントル境界上に蓄積した過去の沈み込みスラブ,南太平洋スーパープルームおよびケルゲレン・ホットプルームなどがはっきりと描かれています.この図は(独)海洋研究開発機構の深尾良夫氏と大林政行氏が特にIsland Arcのために作成しました.



Island Arc 編集長
石渡 明・Simon Wallis

Island Arc 編集事務局長
竹内圭史・角替敏昭

 

(注)この文章は日本地質学会News第9巻2号12ページ(2006年2月号)に掲載されました.

 

【参考資料】 Island Arcの従来の表紙(左)と,2006年1号からの新しい表紙(右). この北極付近を中心とする図は偶数号の表紙を飾り,奇数号の表紙にはオーストラリア付近を中心とする図(上側の断面を裏から見た図)が掲載されます.

 

  

 


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2004年02月27日作成,2008年02月10日更新