日本地質学会第107年学術大会(島根大学)

石渡研究室 発表現場写真と講演要旨

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2001年の地質学会は金沢大学で行われます.皆さん来て下さい.

[武藤俊充] [今坂美絵] [清水 豊] [市山祐司] [石渡 明] [三浦 亮]


【ポスター発表】

武藤俊充君(M2, 左側)↓(右側は同じくM2の山本朗子さん) 講演要旨 もどる

武藤俊充・石渡 明 (2000) 福井県小浜市周辺における丹波帯緑色岩の岩石学的多様性とその起源.日本地質学会第107年学術大会(島根)演旨,p. 276 (No. P-139).

今坂美絵さん(M1)↓ 講演要旨 もどる

今坂美絵・石渡 明 (2000) 京都府丹後半島の中新統ソレイアイト玄武岩・安山岩の岩石学.日本地質学会第107年学術大会(島根)演旨,p. 326 (No.P-240).

清水 豊君(M1, 右側) ↓ もどる

清水 豊・石渡 明・辻森 樹 (2000) 群馬県水上町中新統粟沢層に含まれる上越帯起源の藍閃石片岩礫.日本地質学会第107年学術大会(島根)演旨,p. 289(No.P-166).

市山 祐司 君(M1)↓  もどる

市山祐司・石渡 明 (2000) 京都府夜久野町から発見された夜久野オフィオライト変はんれい岩中のトロクトライトレーヤー.日本地質学会第107年学術大会(島根)演旨,p. 305 (No. P-197).

【口頭発表】

石渡 明・近藤美紀・加々美寛雄 (2000) 能登半島の後期中新世黒崎火山岩類のSr同位体組成と地殻物質の同化作用.日本地質学会第107年学術大会(島根)演旨,p. 178 (No. 0-335).

三浦 亮・石渡 明・玉木賢策 (2000) 北部北上帯の海山起源緑色岩類と沈み込みテクトニクス.日本地質学会第107年学術大会(島根)演旨,p. 114 (No. 0-207)


【講演要旨】 もどる

能登半島の後期中新世黒崎火山岩類のSr同位体組成と地殻物質の同化作用

石渡 明・近藤美紀#・加々美寛雄*(金沢大・理・地球, *新潟大・院・自然科学研究科)

Sr isotopic composition of the late Miocene Kurosaki volcanic rocks in Noto Peninsula, central Japan: Implication for crustal assimilation. Akira ISHIWATARI, Miki KONDO# and Hiroo KAGAMI*Dept. Earth Sci., Fac. Sci., Kanazawa Univ., URL: http://kgeopp6.s.kanazawa-u.ac.jp/~ishiwata/ *Grad. School Sci. & Technol., Niigata Univ.) #現所属:青年海外協力隊

 能登半島西岸の富来町玄徳岬から北東へ「ヤセの断崖」,関野鼻周辺,門前町黒崎岬を経て琴ヶ浜まで分布する黒崎火山岩類は,下位から,中新世中期の関野鼻石灰質砂岩層を覆う安山岩質凝灰角礫岩(飛騨帯片麻岩・花崗岩礫を含む),玄武岩質安山岩溶岩(下半部は自破砕溶岩),安山岩溶岩,それらを貫くデイサイト岩脈よりなり,北部では上位に流紋岩を伴う.全体に北西へ緩傾斜し,全層厚は100-200mである.柴田ほか(1981:岩鉱,76,248-)は8.64±0.64Maの安山岩K-Ar年代を報告した.

 玄武岩質安山岩はかんらん石斑晶を含み,安山岩の一部とデイサイトには普通角閃石斑晶が見られる.玄武岩質安山岩からデイサイトまでは高カリウム系列に属するが(近藤・石渡,1998,地質学会105年松本大会要旨,168),FeO*/MgO-SiO2図ではソレイアイト傾向を示し,デイサイトのFeO*/MgOは5〜8に達する.本岩類の一連の組成変化は,斑晶鉱物の分別作用によって説明可能に見えるが(近藤・石渡,1999,地惑合同大会Mc-P007),今回10個の火山岩試料についてSr同位体比を測定したところ,結晶分別モデルでは説明できない大きな変化が判明した.

 87Sr/86Srは玄武岩質安山岩(3個,SiO2=54 wt.%)で約0.7045,安山岩(4個,SiO2=58-61 wt.%)で0.7048-0.7054,デイサイト(3個,SiO2=63-66wt.%)では約0.7055であった(図1).玄武岩質安山岩からデイサイトまで,SiO2やRb/Srの増加とともにSr同位体比が約0.0010も増加する.高87Sr/86Srの安山岩を除くと,それらは76 Maの偽アイソクロンを描くが(図1),この年代は既存のK-Ar年代(約9 Ma)や下位の石灰質砂岩層の化石年代(14-15Ma)に比べて古過ぎ,混合線の可能性が高い.

 単斜輝石の累帯集合斑晶(径2-3mm)が,本岩類の玄武岩質安山岩や安山岩には多数存在し,その周辺部は粗粒だが,中心部は細粒で,多くは火山ガラスを伴う.玄武岩や安山岩では,石英捕獲結晶の周囲によく火山ガラスと単斜輝石の反応縁が見られる(Sato,1975:CMP,50,49-;石渡・大浜,1997:地質雑,103, 565-;深瀬・周藤,2000:地質雑,106,280-).上述の累帯集合斑晶は,石英捕獲結晶が全部融解し結晶化が進んだ組織と解釈され,マグマが地殻物質を同化した証拠と考えられる.

 飛騨帯基盤岩類中には87Sr/86Srが0.715, SiO2が62 wt.%の片麻岩や87Sr/86Srが0.711, SiO2が74 wt.%の花崗岩がある(Tanaka, 1992: J. Sci. Hiroshima Univ., 9, 435-).これらを用いて同化・結晶分別(AFC)計算を行うと,玄武岩質安山岩に片麻岩を6 wt.%混合すれば高87Sr/86Sr安山岩ができ,花崗岩を12-13 wt.%混合すれば低87Sr/86Sr安山岩を作れるが,同時に計25-38 wt.%の単斜輝石・斜長石・斜方輝石・チタン磁鉄鉱を分別する必要がある.つまり本岩類における同化作用と結晶分別作用の割合は,1:21:6である.この程度同化してもマグマはカルクアルカリ化せず,ソレイアイト的分化作用を行い,SiO2があまり増えずに高K2Oになったと考えられる.

図1.Sr同位体比.

 


京都府丹後半島の中新統ソレイアイト玄武岩・安山岩の岩石学

今坂 美絵・石渡 明(金沢大・理)  もどる

Petrology of Miocene tholeiitic basalt and andesite in Tango Peninsula, Southwest Japan

Mie IMASAKA and Akira ISHIWATARI (Kanazawa Univ.)

西南日本の近畿地方北部、鳥取県東部から京都府にかけての日本海沿岸には、北但層群と呼ばれる中新世火山岩類が広く分布し、前期中新世に玄武岩・安山岩類、中期―後期中新世には安山岩・流紋岩類の活動が認められる(例えば 池辺ほか1965、日本地質学会第72年年会見学案内書;弘原海ほか1966、松下進教授記念論文集105-116)。玄武岩・安山岩類は西南日本の回転(日本海拡大、16―14Ma、Otofuji et al. 1991、Geophys. J. Int. 105 397-405)以前の陸弧火山活動により、そして安山岩・流紋岩類は日本海拡大中もしくはそれ以降の島弧火山活動によって形成された可能性がある。

八鹿累層は日本海拡大前、前期中新世の玄武岩・安山岩類によって構成され、主に兵庫県北部浜坂、八鹿、京都府北部丹後半島に分布する。八鹿累層の年代については古山ほか(1997)が17.8―20.9MaのK-Ar年代を示した。池辺ほか(1965)は丹後半島の玄武岩・安山岩類について顕微鏡観察・主要元素分析を行い、それらがソレイアイトであることを明らかにした。本研究では、京都府竹野郡丹後町小脇付近の宇川沿いで採集した70個の標本を顕微鏡観察し、そのうち20個についてXRF・INAA・SEM-EDX分析を行った。今回新たに、八鹿累層玄武岩・安山岩類の全岩微量元素・鉱物化学組成を報告する。

分析したサンプル(溶岩もしくは凝灰角礫岩中の礫)はすべて玄武岩〜玄武岩質安山岩であり、本研究では斑晶鉱物組み合わせによってType 1からType 4に分類した。Type 1(かんらん石・単斜輝石玄武岩)の斑晶鉱物組み合わせは斜長石+かんらん石+単斜輝石であり、この中の1サンプルはかんらん石斑晶が多く(14.6 vol%)ピクライト質である。Type 2(かんらん石・斜方輝石玄武岩)の斑晶鉱物組み合わせは斜長石+かんらん石+斜方輝石、Type 3(かんらん石玄武岩質安山岩)は斜長石+かんらん石、そしてType 4(斜長石玄武岩)は斜長石のみである。鉱物化学組成はType 1で斜長石のAn値(100・Ca/(Ca+Na)、原子比)が71〜94(大部分は86〜94 )、単斜輝石のMg#(100・Mg/(Fe+Mg)、原子比)が76〜86とどちらも高く、Type 2では斜長石のAn値が54〜72、斜方輝石Mg#が67〜76、Type 3では斜長石のAn値が57〜95、石基単斜輝石のMg#は66〜75、Type 4では斜長石のAn値は60〜68である。かんらん石は変質していて分析できなかった。全岩主要元素ではSiO2-K2O図でSiO2の増加とともに低カリウムから高カリウムにかけての急激なK2Oの増加が見られ、FeO*/MgO-SiO2図(図1)で典型的なソレイアイトの傾向を示す。FeO*/MgO比はType 1〜Type 4まで順番に増加し、Type 4では3.9に達する。Zr-Zr/Y図では、ほとんどのサンプルが陸弧玄武岩(CIAB)にプロットされる(Zr>66ppm、Zr/Y>3.7)。これは八鹿累層の玄武岩が日本海拡大前の陸弧で噴出した火山岩であることと整合的である。また希土類元素パターンでは(La/Yb)nが3.3〜13.6と幅があるが、Type 3のものを除けば5.7より小さい。微量元素パターン(図2)からはLIL元素やLREEに富む傾向やNbの負の異常、Pbの正の異常が見られ、これらの特徴もこの火成活動が陸弧的であることを示す。

これらの結果から、以下のことが言える。

1.北但層群八鹿累層の玄武岩〜玄武岩質安山岩の全岩主要・微量元素組成は陸弧ソレイアイトの性質を示す。

2.本研究地域の玄武岩〜玄武岩質安山岩は斑晶鉱物組み合わせから、かんらん石・単斜輝石玄武岩(Type 1)、かんらん石・斜方輝石玄武岩(Type 2)、かんらん石玄武岩質安山岩(Type 3)、斜長石玄武岩(Type 4)に分類することができる。

3.全岩化学組成のFeO*/MgO比はType 1〜Type 4の順に増加し、輝石のMg#や斜長石のAn値もType 1で最も高い。しかし最も分析数の多いType 3では化学組成のばらつきが大きい。Type 3には、比較的SiO2やLIL元素に富み、An値の高い斜長石を含む、多少カルクアルカリ岩的な岩石が含まれる。


日本地質学会第108年学術大会(2001年,金沢大学)

おいでまっし! 金沢へ.

学術大会:2001年9月21日(金)〜23日(日) 総会:22日(土)
巡検24日(月・祭)〜25日(火)

2001年金沢大会への参加を呼びかける同大会準備委員長の大村明雄教授.
(島根大学での日本地質学会懇親会にて)


2000年10月24日作成,2001年06月21日更新