尿管結石

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 私はこれまで25年間,岩石を研究してきましたが,今回,なんと自分の体の中で「岩石」を製造してしまいました.

左の写真がその石です.ギザギザの形の白色結晶集合体で,長径約4mmの大きさでした.成分は現在病院に検査を依頼中で,まだわかりません.

(1月11日に病院に行ったら,蓚(しゅう)酸カルシウムという結果が出ていました.蓚酸が含まれる食物として,ほうれん草,たけのこ,ココア,チョコレートが要注意とのことです.これらはすべて私の好物で,特に最後のものには目がないのですが,今後はこれらを控えないと,また鉱物ができてしまうとのことで,残念ながら自主規制します.)

病気の経過は以下のようでした.1998年12月12日(土)午後,金沢市梅田町の森本断層発掘現場を1人で観察してから,地団研北陸支部の講演会・総会・忘年会に出席するため,自家用車で金沢市内へ向かいました.この時は,別段何も病気の兆候はありませんでした.金沢市中心部の香林坊地下駐車場に車を入れようと,土曜の午後の長蛇の列の後ろについて,やっと地下に潜った辺りで(午後3時15分頃),急に右横腹が痛くなりました.しかし,大したことはないと考えて,そのまま駐車し,道具を持って近くの会場に駆け込みました.そこで痛みをこらえながら講演会と総会の司会をしましたが,痛みがだんだん酷くなったので,忘年会で酒を飲むのは無理と判断し,支部長に後を託して,医者に行くため地下駐車場へ歩いて戻りました(午後5時半頃).車で駐車場から出て,とりあえず自宅へ向かおうとしましたが,地上に出た直後に右横腹で激痛が始まり,とても運転できる状態ではなくなりました.目前にガソリンスタンドが見えたので,そこで助けを求めようと思いましたが,ふと近くに広坂消防署があることを思い出して,なんとか消防署まで運転して,そこで助けを求めました.消防署員は迅速に対応して下さり,すぐに救急車で自宅近くの金沢市立病院に運んでくれました(午後6時頃着).救急車で病院に運ばれたのは,生まれて初めてです.病院の救急外来では,すぐに尻に鎮痛剤の注射を打ち,座薬の鎮痛剤も入れて処置し,尿と血液の検査およびエコー診断をしました.尿は,自分でも一見して異常とわかる血尿で,熱も37.5度くらいありました.石が小さいようなので,治療は,鎮痛しながら,石が自然に出るのを待つしかなく,入院の必要はないという診断でした.鎮痛剤が効き出したところで,妻に電話して迎えに来てもらい,午後7時頃帰宅しました.その晩と次の日(13日の日曜)は激痛と微熱が続き,自宅で6時間に1度座薬を入れながら(あまり鎮痛効果が強くない),のたうち回っていました.

14日(月曜)の朝はいくらか痛みも和らぎ,病院へ検査に行きました.腕から血管に造影剤を入れて,10分毎に腹部のX線写真を撮りました.これらを見ると,右の腎臓が左の腎臓の2倍くらいの大きさに張れあがり(触っても張れているのがわかった),右の尿管もかなり張れていて,尿が膀胱の直前でブロックされている様子がはっきり写っていましたが,石そのものはX線写真に写りませんでした.右横腹の痛みは16日(水曜)くらいまで時々起こり,19日(土)くらいまで頻尿に悩まされました.19日に近くの薬屋で,「ウワウルシ」(漆とは関係ないツツジの仲間の葉)という薬草を見つけました.これはヨーロッパで何百年も前から腎臓,尿管,膀胱,尿道など尿路系の結石の治療に用いられてきた薬草で,百科事典にも詳しく載っています.喜んでこれを買い求め(ティーバッグ式になっていて,20袋以上入って480円だった),早速自宅で煎じて飲みました.そして次の日曜日(12月20日)の朝,尿と一緒に出てきたのが上の写真の石です.偶然かもしれませんが,ウワウルシが効いたのかもしれません.出る時は特に痛みはなく,「あっ,何か通ったな」という感じでした.結局,発病してから石が出るまで8日間かかりました.ビールを飲めばよいとか,縄跳びをすれば早く出るとか,いろいろ言う人がいますが,病気の時にビールなど飲む気になれませんし,家の近くの散歩くらいがせいぜいで,縄跳びなどする気にもなれません.この急病のおかげで,京都大学原子炉実験所へ放射化分析のために14日から18日まで出張する予定だったのが,私だけ行けなくなり,同所共同利用係の皆様,金沢大学医学部の天野良平先生,理学部地球学科の太幡芳彦先生,M2の近藤さん,4年の山本さん,武藤君など,出張組の皆様にご迷惑をかけてしまいました.お詫びいたします.

あとで聞いてみると,身の回りにも同じ病気になった人が,男女を問わず何人かあり,やはり相当な激痛だったようです.横腹でなく,背中が痛くなったという人もいます.ただ,それらの人は,ほとんどが入院して治療したそうで,何か私だけ損をしたような気分です.だれにでも,何時起こるかわからない,突然激痛が襲ってくる病気ですから,どうかご用心下さい.頻尿,残尿感,鈍痛など,何か尿路系統の不調を感じるようであれば,しばらく「ウワウルシ」を煎じて飲むと,予防になると思います.

もどる 1999年01月04日作成, 2001年06月21日更新