学会講演要旨集

金沢大学理学部地球学科 石渡研究室

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[1999年度の目次]

日本地質学会(1999年10月9〜11日.名古屋大学.)

  • 石渡 明「大陸衝突型・付加型造山帯のオフィオライトと緑色岩」
  • 石渡 明「中国大別-蘇魯超高圧変成帯:その東方延長は?」
  • 辻森 樹・石渡 明・板谷徹丸・S.V.ヴィソツキー?・S.V.コバレンコ?・A.I.ハンチューク「ロシア沿海州の250-230Ma 藍閃変成帯は中朝地塊-揚子地塊衝突帯の東方延長か?」
  • 武藤俊充・石渡 明「福井県小浜地域の丹波帯および滋賀県霊仙石灰岩体の緑色岩の岩石学的比較研究」
  • 山本朗子・石渡 明「石川県金沢市医王山の中新統流紋岩と真珠岩の岩石学的研究」
  • 地球惑星科学関連学会合同大会(1999年6月8〜10日.国立オリンピック記念青少年総合センター.)

  • 石渡 明・S.D.Sokolov「ロシア北東部アニュイ帯の沈み込み帯域(SSZ)オフィオライト」
  • 辻森 樹「大江山かんらん岩体に産する普甲峠高圧変成沈積岩の高圧(2GPa)変成作用」
  • J.C. Lopez and A. Ishiwatari「Multi-Series Volcanic Rocks of Anamizu Formation, Uchiura-Noto Area, Noto Peninsula」
  • 近藤美紀・石渡 明「能登半島北西部、黒崎火山岩類の地球化学的特徴;高カリウム系列火山岩の結晶分化作用」
  • Superplume International Workshop (Jan. 28-31, 1999 at Inst. Phys. Chem. Res., Wako City, Japan)

  • Ishiwatari, A., Sokolov, S. D., Saito, D., Tsujimori, T. and Miyashita, S. "Superplume-related ophiolites among western Pacific accretionary complexes: examples from Koryak Mountains, northeastern Russia"

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    大陸衝突型・付加型造山帯のオフィオライトと緑色岩

    石渡 明(920-1192金沢大・理・地球e-mail: geoishw@kenroku.kanazawa-u.ac.jp)

    Ophiolites and greenstones in collisional and accretionary orogenic belts.

    Akira ISHIWATARI (Department of Earth Sciences, Kanazawa University Kanazawa 920-1192 Japan URL: http://kgeopp6.s.kanazawa-u.ac.jp/~ishiwata.)

     地球上の様々な地質時代の造山帯は,大陸衝突型と付加型に区分できる.大陸衝突型の例は新生代のアルプス・ヒマラヤ造山帯や古生代のアパラチア・カレドニア・ウラル造山帯であり,付加型の例は日本列島をはじめ,ロシア極東,北米西岸,オーストラリア東岸,ニュージーランドなどの環太平洋造山帯である.本講演では,これら2種類の造山帯に産するオフィオライトや緑色岩の地質学的,岩石学的特徴をまとめる.

    【共通点】
    1.マントルかんらん岩,苦鉄質・超苦鉄質火成沈積岩類,玄武岩質火山岩類がこの順序で重なった層状複合岩体としてのオフィオライトは,どちらの型の造山帯にも普遍的に産し,層状岩脈群の有無も造山帯の型とは無関係である.
    2.オフィオライトはどちらの造山帯でも衝上断層によって境されたスラスト・シートまたはメランジとして産する.オフィオライトの下位の地質体は低温高圧型変成作用を受けていることが多いが,一般にオフィオライトそのものは低温高圧型変成作用を受けていない(アルプス山脈は例外)
    3.島弧系に特徴的な火山岩(島弧玄武岩,カルクアルカリ安山岩,高マグネシア安山岩など)や深成岩を伴うオフィオライトはどちらの型の造山帯にも多産し,海嶺から島弧へのマグマ活動の時間的変遷を示すとされるオフィオライトもある(例えばオマーン).

    【相違点】
    1.構造的下位の地質体 大陸衝突型造山帯のオフィオライトは,それより古い大陸地殻の上に構造的に載っているか,または2つの古い大陸地殻の間に挟まれている.それに対して,付加型造山帯のオフィオライトは,それより若い付加帯の上に構造的に載っており,若いオフィオライトの上に直接載っていることもあって,多重オフィオライト帯を形成している.
    2.形成年代の幅 大陸衝突型造山帯のオフィオライトは,延長数1000kmにわたって形成年代が数10m.y.以内で一定しているが,付加型造山帯のオフィオライトは形成年代が数100m.y.にわたる.どちらにも,古生代前期と中生代後期に顕著なオフィオライト・パルスが見られ,後者は白亜紀スーパープルームの時期と一致する.
    3.下底変成域(metamorphic sole) オフィオライトのかんらん岩の直下に著しい変形を伴う「接触変成帯」が見られることがあり,高温のマントルが固体状態で衝上した証拠とされるが,これは大陸衝突型造山帯に限られる(オマーン,ベイオブアイランズなど).
    4.火成岩岩石学的多様性 どちらの型の造山帯でも,オフィオライトの岩石学的性質は変化に富み,例えばマントルかんらん岩を見ると,地域ごとに(あるいは1つの岩体内部でも)レールゾライトからハルツバージャイトまで変化するが,単斜輝石を含まない高枯渇度ハルツバージャイト(平均Olivine Fo>92,Spinel Cr#≧80)を大規模に伴うオフィオライトは,付加型造山帯に限って産する.
    5.厚い海洋地殻 オフィオライト層序の下位に向かって温度の上昇する変成作用はどのオフィオライトでも見られるが,モホ面付近にグラニュライト相変斑れい岩を伴い,20km程度以上の厚さをもった海洋性地殻の断片と考えられるオフィオライトは,付加型造山帯にのみ産する(夜久野,沿海州・ビキン,アラスカ・トンシナ).
    6.ポリネシアタイプの玄武岩が,付加した海山の断片と考えられる環太平洋地域の付加体緑色岩の一部に見られる.

    【結論】

     環太平洋地域のオフィオライトや緑色岩に特徴的に見られる高涸渇度かんらん岩,厚い海洋性地殻,ポリネシアタイプの海洋島玄武岩などは,数億年周期のスーパープルーム活動に伴う活発な地球内部物質循環の一連の産物である可能性がある.


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    中国大別-蘇魯超高圧変成帯:その東方延長は?

    石渡 明(920-1192金沢大・理・地球e-mail: geoishw@kenroku.kanazawa-u.ac.jp)

    Dabie‐SuLu ultra-high pressure metamorphic belt, China: where is its eastward extension?

    Akira ISHIWATARI (Department of Earth Sciences, Kanazawa University Kanazawa 920-1192 Japan URL: http://kgeopp6.s.kanazawa-u.ac.jp/~ishiwata.)

     【はじめに】筆者は1989年以来,京都大学の坂野昇平氏,平島崇男氏,石坂恭一氏,名古屋大学の榎並正樹氏らとともに,中国科学院地質研究所と共同で中国蘇魯超高圧変成帯を研究してきた.また,西南日本内帯およびロシア沿海州シホテアリン山地の古生代オフィオライトと高圧変成岩についても,辻森 樹氏らとともに研究してきた.ここでは,これらの知見と最近の文献に基づき,中朝地塊と揚子地塊の衝突帯の東方延長について論じる.

     中朝地塊と揚子地塊は,どちらも先カンブリア系基盤をもつ大陸塊だが,古生界の層序や化石生物相が異なることが古くから知られ,その境界は秦嶺(Qinling)-京城(Seoul)線(地軸,陸橋)と呼ばれていた.中朝地塊では,3kmほどの厚い下部古生界石灰岩を薄い上部石炭系の砂岩・泥岩・炭層が不整合に覆い,シルル系から下部石炭系までの「大欠層」が特徴的であるのに対し,揚子地塊では厚い下部古生界石灰岩と厚い上部石炭系石灰岩の間に,500m程度の厚さのシルル・デボン系頁岩が挟まれる.ただし,朝鮮半島では,ソウル南方の沃川(Ogcheon)帯でも「大欠層」がみられ,南北の化石生物相の違いもはっきりせず,ソウル付近の境界は疑問である.

     蘇魯超高圧変成帯の東方延長として,Ernst and Liou (1995:Geology, 23, 353-)は,軍事境界線付近の臨津江(Imjingang)帯から京畿(Gyeonggi)地塊北部を想定し,それが更に日本の三郡帯および宇奈月帯に伸び,もう1つの支脈がシホテアリンに伸びる可能性を示した.江蘇・山東省の蘇魯帯とそれが_蘆(Tan-Lu)断層で変移した西方延長とされる湖北・安徽省の大別山では,高圧及び超高圧変成岩のAr-Ar,Nd-Sm及び変成ジルコンのU-Pb年代として210-240Ma (Li et al. 1993: Chem. Geol., 109, 70-; Ames et al. 1993: Geology, 21, 339-) が報告されている.臨津江帯のザクロ石角閃岩から249MaのNd-Sm鉱物アイソクロン年代を報告したRee et al. (1996:Geology, 24, 1071-)は,Ernst and Liouの考えを支持し,その角閃岩はエクロジャイトが後退変成したものと考えた.しかし,臨津江帯では,既に山口(1951:地質雑57,419-)が報告したように,角閃岩分布域のすぐ北に,片理が北傾斜で変成度が南方へ上昇する典型的なバロウ型中圧変成帯(ザクロ石帯,十字石帯,藍晶石帯)がある.このような変成帯は大別-蘇魯地域には存在せず,全体に北傾斜の大別地域では,逆に北方へ変成度が上昇する.

     中朝地塊内部では,北京西方の房山付近にも,泥質岩に藍晶石や十字石を産し,白雲母Ar-Ar年代が200-230Maの中圧型変成帯があり(Wang and Chen, 30th IGC T208 Field Trip;ただし低圧型の後退変成が顕著),臨津江帯は沃川帯(Min & Cho, 1998: Lithos, 43, 31-)や宇奈月帯(Hiroi, 1981: Tectonophysics, 76, 317-)とともに,このような中朝地塊内部の局地的な古生代後期〜中生代前期変成作用の産物と思われる.沃川帯や宇奈月帯も,臨津江帯と同様,構造的下位に多量の角閃岩類を伴うという共通点もある.

     ロシア沿海州のSergeevka変斑れい岩体(古生代前期オフィオライト)下の地窓に産するShaiginskiy高圧変成岩類の泥質岩の白雲母K-Ar年代は230-250Maである(辻森ほか,本学会講演).この年代は,西南日本内帯の大江山オフィオライトの構造的下位に産する蓮華変成岩類(280-330Ma)と周防変成岩類(170-200Ma)の中間であり,上述の大別-蘇魯超高圧変成帯の年代値と一致する.

     一連のプレート収束帯の延長上でも,大陸地殻が沈み込む部分では超高圧変成作用が起き,海洋地殻が沈み込む部分では通常の高圧変成作用が起きたことは充分考えられる.しかし,ある時代に形成された高圧変成岩が,すべて上昇して全延長に分布するわけでないことは,現在の断片的な分布を見ても明らかである.

     【結論】蘇魯超高圧変成帯の東方延長は朝鮮半島にはなく,その南,即ち西南日本内帯からロシア沿海州に伸びる古生代後期〜中生代前期の高圧変成帯(広義の三郡帯)であった可能性が高い. 


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    ロシア沿海州の250-230Ma 藍閃変成帯は中朝地塊-揚子地塊衝突帯の東方延長か?

    辻森 樹*・石渡 明*・板谷徹丸**・S.V.ヴィソツキー?・S.V.コバレンコ?・A.I.ハンチューク?(*金沢大・理学部;**岡山理大・自然科学研;?極東地質研究所)

    Is the 250-230 Ma blueschist belt in Primorye (Far East Russia) easteward extension of Qinling-Dabie-Sulu colisional belt ?

    T. Tsujimori*, A. Ishiwatari*, T. Itaya**, S.V. Vysotskiy?, S.V. Kovalenko?, A.I. Khanchuk? (* Kanazawa Univ.; ** Okayama Univ. Sci.; ? Far East Geol. Inst.)

     ロシア沿海州シホテアリン山地内陸部には古生代造山帯が広域(約50×300km)に分布する.昨年度,辻森と石渡はロシア側スタッフと共に,沿海州ではじめて藍閃変成岩が記載されたAlekseevka川地域(Kovalenko and Khanchuk, 1991)を含むPartizansk東側の山地(ナホトカ北東約50km)の現地調査を行った.ここでは古生代前期の巨大な変はんれい岩体のスラストシート(Sergeevka gabbro)の構造的下位に,幅2km,長さ20km程度の3列の地窓として結晶片岩類(Shaigisky complex)が狭く分布する(石渡・辻森,1999,地学雑誌108巻2号の口絵図参照).Kovalenko and Khanchuk (1991)は含ざくろ石泥質片岩中のフェンジャイトのK-Ar年代として255Ma及び290Maを報告しており,当初,我々はShaiginskiy変成岩が,西南日本の蓮華変成帯に相当するものと期待していた.実際に,古生代前期のオフィオライトの構造的下位に古生代後期の藍閃片岩がある関係は日本海対岸の西南日本内帯と共通し,地質構造の連続性を示唆する(ただし,沿海州では秋吉帯相当の付加体を欠き,オフィオライト岩類にはマントルかんらん岩が全くない).ところが,予察的な年代測定の結果,Shaiginskiy変成岩(泥質片岩)のフェンジャイトから250〜230 Maに集中するK-Ar年代が得られた.この年代は,西南日本の蓮華変成帯(330〜280Ma)とも周防変成帯(200〜170Ma)とも一致せず,むしろ,秦嶺-大別-蘇魯変成帯(240〜220Ma),臨津江(Imjingan)変成帯(250-220Ma),宇奈月変成帯(250〜210Ma)の年代値に近い.

    I. Shaiginskiy変成岩の岩石学的特徴とK-Ar年代

     Alekseevka川地域:緑れん石-クロス閃石片岩(ヘマタイト含む)が,泥質〜砂質片岩に挟まれる.泥質片岩には自形のざくろ石斑状変晶がよく発達する.砂質片岩は方解石とヘマタイト(TiO2に富む(8-10wt.%))に富みルチルが安定に存在する.まれに,バロア閃石を含む.[泥質片岩及び砂質片岩4試料のK-Ar年代測定結果:233.9ア4.9 Ma,239.3ア5.0 Ma,251.6ア5.3 Ma,254.9ア5.4 Ma,256.7ア5.4 Ma]
     Ikryanka川地域:塩基性片岩が卓越し若干の泥質片岩を挟む.この地域では結晶片岩に伴い,2.1〜2.6GaのRb-Sr年代を示すざくろ石角閃岩・片麻岩・大理石など(Avdakimov complex)が露出する.塩基性変岩中の角閃石の組成は,バロア閃石,タラマイトからホルンブレンドまで変化する.泥質片岩はざくろ石帯以上の変成度で,高変成度部では灰曹長石(An18)が出現する(ただし,黒雲母は全く出現しない).[泥質片岩3試料のK-Ar年代測定結果:232.7ア4.1 Ma,236.7ア5.0 Ma,240.2ア5.0 Ma]

    II. 沿海州の250〜230Ma藍閃変成帯の地質学的意味

     日本列島では約1億年周期の間欠的な藍閃変成帯の上昇と花崗岩帯の形成による造山帯の発達史が明らかにされているが(例えば,Isozaki, 1996),今回,Shaiginskiy変成岩から得られた250〜230Maの上昇年代は,西南日本の藍閃変成帯の上昇年代とは全く重ならない.これは,Shaiginskiy変成岩が揚子地塊縁に成長してきた西南日本とは全く別の大陸縁で形成した可能性を示唆する.東アジアでは約250Maの中朝地塊と揚子地塊の衝突が秦嶺-大別-蘇魯変成帯として記憶されており,その東方延長として臨津江帯(Cho et al., 1995; Ree et al., 1996),宇奈月帯(相馬・椚座,1993)が指摘されている.地理的位置と得られた年代値を考慮すれば,Shaiginskiy変成帯はそれら衝突帯の東方延長に位置した沈み込み帯で形成した可能性が考えられる.沿海州付加体はKhanka(Jimusi)地塊東縁に発達しており,Khanka地塊南縁はシルル期藍閃変成帯を含む古生代前期造山帯を縫合帯として中朝地塊に接する.沿海州付加体では西南日本内帯付加体群との類似性が指摘されてきたが,それらが中朝地塊ないしKhanka地塊を核に成長したとすれば,約250Ma以前の付加体が西南日本のそれとは異なった発達史を記憶していても不思議ではない.予察的に,Shaiginskiy泥質片岩4試料の全岩化学組成を検討したところ,Mg/(Mg+Fe*)モル比が0.19〜0.33と,三波川泥質片岩(平均0.42:Goto et al., 1996)や蓮華泥質片岩(0.39-0.49:辻森,未公表データ)より明らかに小さい.Aユ値は-0.35〜0.08と低く三波川や蓮華と共通するが,低いMg/(Mg+Fe*)比は宇奈月泥質片岩(平均0.25:廣井,1984)と共通する.

     今後,上記の新しい視点を踏まえ,沿海州古生代造山帯の調査を進める予定である.

    *)学会当日は上記講演要旨をエントリーした後に年代測定した結果も含めて全部で32個の年代測定結果を紹介します.


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    石川県金沢市医王山の中新統流紋岩と真珠岩の岩石学的研究

    山本 朗子・石渡 明(金沢大・理)

    Petrological study of the Miocene rhyolite and perlite fromMt. Iozen, Kanazawa City, Ishikawa Prefecture

    Akiko YAMAMOTO and Akira ISHIWATARI(Kanazawa University)z

     石川県金沢市東端に位置する医王山(Fig.1)には、真珠岩を含む中新統の流紋岩類が分布する。松尾・中西(1967)は医王山北麓の上部医王山累層について綿密な地質調査を行った。柴田(1973)の全岩試料を用いたK-Ar年代は14.1±1.2Ma、雁沢(1982)のジルコンF.T.年代は16.5±1.4Maと15.0±2.1Maである。しかし化学組成分析などの研究はほとんどされていない。
    一般に、黒曜岩、松脂岩、真珠岩などの溶岩が急冷して形成されたガラス質流紋岩は、結晶質流紋岩の周縁に急冷部として存在すると考えられている。しかし、吉村ほか(1984)と八幡ほか(1984)は、津川〜会津地域の流紋岩とその中に産する真珠岩は、斑晶鉱物組合せ、鉱物化学組成、全岩化学組成が異なることから、異なるマグマが噴出したものであると述べた。本研究では、医王山の流紋岩と真珠岩について、岩石学的比較研究を行った。

     医王山累層の下部では径数m程度の真珠岩が径数10〜100m程度の流紋岩岩体の周縁部にブロックとして分布している。流紋岩は淡赤褐色〜灰色を呈し、細かな流理構造を示す結晶質の溶岩である。数・〜数・大のスフェルライトも見られる。真珠岩は黒色を呈するガラス質の岩石で、流理構造の見られる溶岩である。流理の方向は流紋岩と大きく斜交することが多い。真珠岩のブロックが流紋岩に包まれている露頭もあり、先に噴出した真珠岩が巻き込まれた構造であると考えられる。

     真珠岩は斜長石、紫蘇輝石、普通角閃石斑晶を持つが、流紋岩は紫蘇輝石斑晶を持っていない(Table.1)。つまり斑晶鉱物組合せが異なるので、真珠岩は流紋岩の急冷部分ではなく、別のマグマから形成されたものであるといえる。またM.T.Naney(1983)の相平衡図によると、斑晶鉱物組合せから見て流紋岩より真珠岩の方が水の量が少ないマグマであったと考えられる。現在のH2O量は真珠岩が約5%、流紋岩が約1%だが、これは固結後の加水によると考えられる。真珠岩の普通角閃石斑晶は流紋岩のものよりもCrが多く、真珠岩の全岩主要元素組成は流紋岩よりもFeO*とMgOが多い。これらのことから、真珠岩の方が流紋岩よりも未分化なマグマであったと考えられる。流紋岩と真珠岩のHFS元素のZr、Nb量はほぼ同じで、また希土類元素分析のREEパターンはよく似た傾向を示すことから、流紋岩と真珠岩は分化程度は異なっていたが、元々は同一のマグマから分化したものと考えられる。また、真珠岩の方が流紋岩よりもCaO、Na2Oが多く、K2Oが少ないという差がみられ、RbとSrについては、真珠岩の方がやや多い傾向がある。このようなLIL元素については、元々の組成の違いに加え結晶質流紋岩とガラス質真珠岩の間で熱水による差別的な元素の移動があったためと思われる。

    Table.1 斑晶鉱物組合せ(数字は代表的な 岩石のモード%) <省略>
                
    Fig.2 医王山流紋岩と真珠岩(噴出時は黒曜岩)の噴火モデル <省略>


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    福井県小浜地域の丹波帯および滋賀県霊仙石灰岩体の緑色岩の岩石学的比較研究

    武藤 俊充・石渡 明(金沢大・理)

    Petrological comparison of greenstones from Tamba belt in Obama region, Fukui Prefecture, and Ryozen limestone body, Shiga Prefecture

    Toshimitsu MUTO and Akira ISHIWATARI (Kanazawa University)

     付加体中に産する緑色岩は、過去の海洋プレートの沈み込みに伴って大陸プレート側に付加された海洋地殻の断片であると考えられており、主として変質した玄武岩質の火成岩から構成され、海洋性堆積物としてチャート、石灰岩、泥質岩を伴う。この緑色岩の起源を知ることは付加体の形成過程や海洋の古火山の活動を考察するうえで重要であり、これまでにさまざまな地質体において緑色岩の研究がされてきた。本地域の西方では、佐野・田崎(1989)や中江(1991)の研究がある。本研究では丹波帯を例として、岩石学的研究があまりされていない小浜地域と霊仙地域について全岩化学組成や鉱物化学組成などを検討し、現在のさまざまなテクトニックセッティングで噴出するマグマの化学的特徴と比較してその起源について議論する。

     西南日本のジュラ紀付加体である丹波帯は、主に層状チャート、緑色岩、石灰岩、砕屑岩から構成される。福井県西部の小浜地域は丹波帯の北端に位置し、ジュラ紀中期の泥質岩中に層状チャート・緑色岩・石灰岩が剪断されたブロックとして分布する。緑色岩の年代は、石炭紀〜ペルム紀とされている(中江・吉岡 1998)。滋賀県彦根市東部の多賀町を中心とした地域には、丹波帯の上に衝上した緑色岩・チャートを伴うペルム紀の霊仙石灰岩体がある。この地域には小浜地域のような剪断は見られない。これに伴う緑色岩についての岩石学的研究はほとんど行われていない。

    小浜地域   全岩主要元素は全般にTiO2が1.5~3.0wt.%と高く、海洋起源の岩石であることを示す。上根来のサンプルではK2Oが高く(1.7~3.6wt.%)、アルカリ岩の組成を示すが、他はソレアイト的な組成である。青木・伊東(1968)のAl2O3とTiO2を用いた分類によるとソレアイトはMORBの領域にプロットされる。また、希土類元素からは、K2Oの高いサンプルは海洋島アルカリ岩、ソレアイトについてはT-MORBないし海洋島ソレアイトのパターンを示す。
     全岩でソレアイト的な組成を示す岩石は、残晶単斜輝石でもLeterrier et al. (1982) の図で非造山帯玄武岩の領域にプロットされる組成をもつ。1地点のみで見つかったかんらん石仮像中のクロムスピネルはCr/(Cr+Al)比が低く(0.2~0.3)、TiO2が高い(0.4~0.6wt.%)海洋島玄武岩のものと類似する。また、上根来のサンプル中には径1・前後の粗粒なケルスート閃石が入っており、これからもアルカリ岩であることが裏づけられる。

    霊仙地域   全岩主要元素は、TiO2が2.0~3.0wt.%と高く、小浜地域と同様に海洋起源であることを示す。Al2O3−TiO2図、希土類元素のパターンでは、霊仙地域の緑色岩が明らかに海洋島起源のソレアイトであることを示している。また、残晶単斜輝石の分析でも非造山帯のソレアイトに特徴的な組成を示す。これらは緑色岩が石灰岩に覆われている産状とも矛盾しない。

    まとめ   小浜地域には海洋島起源のアルカリ岩と海洋島または海嶺起源のソレアイトの2種類の緑色岩が存在し、霊仙地域には海洋島起源のソレアイトだけが分布している。この分析結果は、小浜地域が泥質岩中に緑色岩やチャートがブロックとして分布している複雑な付加コンプレックスであるのに対して、霊仙地域がその上に衝上した石灰岩体であるという地質学的な特徴とも一致する。霊仙地域のソレアイトは小浜地域のものに比べてTiO2/Al2O3比が高く(0.2 前後)、スーパープリュームに関連するポリネシア地域の海洋島ソレアイトに近い。


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    ロシア北東部アニュイ帯の沈み込み帯域(SSZ)オフィオライト

    石渡 明(金沢大学理学部)・S.D.ソコロフ(ロシア科学院地質研)

    Supra-subduction zone (SSZ) ophiolites in the Anyuy zone, northeastern Russia

    Akira ISHIWATARI (Dept. Earth Sci., Kanazawa Univ.) and Sergei D. SOKOLOV (Geol. Inst., Rus. Acad. Sci.)

     アニュイ帯は、コリマ・オモロン地塊とチュコートカ・ランゲリア地塊の間の、発達した付加体を持つ造山帯で、ベーリング海側のコリヤーク山地付加体の支脈と考えらるが、両者の構造方向はほぼ直交し、両者の接続部は白亜紀のオホーツク・チュコートカ火山帯が覆っている。アニュイ帯は、北極海岸から南東方向へビリビノの南を通って約700kmにわたって伸び、その南端部にアルチン(Aluchin)・オフィオライト(Lychagin, 1985)とその東方のグロマドネンスク・ブルグベエム(Gromadnensk-Vurguveem)斑れい岩・花崗岩体(Lychagin et al. 1991)がある。アルチン岩体は年代不詳(中・古生代)だが、グロマドネンスク岩体の斜長石花崗岩は約250MaのK-Ar年代を示す。我々は1998年7月17日〜8月6日に科学技術振興調整費によってこれら2つの岩体を調査したので報告する。
     アルチン・オフィオライトは幅10km、長さ50kmの南北に伸びた地域に露出し、アニュイ帯の主要構成物質である三畳紀から白亜紀の火山砕屑岩類および陸源堆積物(いわゆる付加体の岩石)、及び古生代後期の堆積岩類と断層で接する。今回は、東から西へ流れる大アニュイ川より北側の部分を調査した。大アニュイ川支流のオルロフカ川がこの部分を北東から南西に流れ、川の両側には輝緑岩の「平行岩脈群」が広く露出する。その東側には古生層を間に挟んで超苦鉄質岩類が1〜2kmの幅で南北に伸びる。
     オルロフカ川東岸の「平行岩脈群」はカンラン石・単斜輝石・斜長石斑晶を含む変玄武岩から角閃石・斜長石・石英斑晶を含むデイサイト、及び等粒状組織の斑れい岩などからなる疎らな岩脈群で、斜方輝石に富むかんらん石ウェブステライトやトロクトライトなどの層状超苦鉄質〜苦鉄質岩類がスクリーンをなす。一方、同川西岸のものは比較的密集した斑れい岩〜輝緑岩脈よりなり、玄武岩溶岩・斜長石花崗岩・超苦鉄質沈積岩を伴う。
     東縁部の超苦鉄質体はハルツバージャイト、ダナイト、ウェブステライト、ウェルライト、輝石岩などからなり、多数の細粒輝緑岩〜ペグマタイト質斑れい岩の岩脈に貫かれている。調査範囲の南部ではハルツバージャイトが卓越し、北部はダナイト・輝石岩が多い。ハルツバージャイトは単斜輝石を2-3%含み、斜方輝石は単斜輝石のラメラやブレッブを多量に含む。スピネルは半自形で、濃赤褐色を呈する。クロミタイト中のCrスピネルのCr#は82と、非常にCrに富む(Lychagin, 1985)。沈積岩類は淡赤色の多色性を示す斜方輝石を多く含み、褐色〜緑色の角閃石を含むものも多い。
     グロマドネンスク・ブルグベエム複合岩体は、北西−南東方向に伸びる最大幅10km、長さ60km以上の火成岩類からなる衝上岩体で、北東側に広く分布するジュラ紀後期のチャート・玄武岩層に衝上し、南西側では、古生代後期から三畳紀の火山砕屑岩類のユニットに衝上されている。グロマドネンスク斑れい岩は主としてノーライト質の層状斑れい岩で、複合岩体の北東側に帯状に分布し、その南西部分は次第に角閃岩や斜長石花崗岩に近い性質になり、その西側にブルグベエム花崗岩類(斜長石花崗岩、トーナライト、石英閃緑岩)が分布する。またグロマドネンスク斑れい岩中には、かんらん岩、ダナイト、トロクトライトなどの超苦鉄質層状岩体がいくつか含まれている。野外では、超苦鉄質岩類は斑れい岩類と一連の層状構造を作っているように見える。斑れい岩の多くは非常に新鮮なガブロノーライトであり、淡赤色の多色性を示す斜方輝石に富み、褐色〜緑色の角閃石を含むものもある。角閃岩も斜方輝石を多く含む。トロクトライトも斜方輝石を多く含み、斜長石の周囲が角閃石に取り囲まれているものが多い。斜長石とカンラン石の接触部や緑色角閃石に伴ってよく緑色スピネルが見られる。
     アルチン・オフィオライトは超苦鉄質岩部分が多数の岩脈に貫かれ、輝緑岩・斑れい岩岩脈群が発達する点で、環太平洋地域では特異なオフィオライトである。マントルかんらん岩は典型的なハルツバージャイトである。これらのことから考えて、本オフィオライトは、沈み込み帯上の涸渇したマントルの上に形成された縁海拡大軸のような環境で形成された可能性が高い。一方、グロマドネンスク・ブルグベエム複合岩体は、後期古生代という時代においても、多量の花崗岩類を伴う巨大な斑れい岩の衝上岩体という点でも、西南日本の夜久野オフィオライトと似ているが、角閃岩相やグラニュライト相の変斑れい岩にはなっておらず、トロクトライト質レーヤーを持つ、地下浅所で固結した斑れい岩・花崗岩複合岩体である。斑れい岩類が斜方輝石に富むことと、かなり多量の斜長石花崗岩を伴うことから考えて、この岩体は未成熟な海洋性島弧地殻の断片と考えられる。


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    大江山かんらん岩体に産する普甲峠高圧変成沈積岩の高圧(2GPa)変成作用

    辻森 樹(金沢大学理学部)

    High-pressure (2GPa) metamorphism of the Fuko Pass metacumulate, Oeyama ophiolite (SW Japan)

    Tatsuki Tsujimori (Dept. Earth Sci., Kanazawa Univ.)

     京都府北部の大江山かんらん岩体に,藍閃石や十字石を含む変成沈積岩ユニットが産する(Kurokawa, 1985).この変成沈積岩類は,後述のように,大江山オフィオライトの他の構成岩類とは全く履歴が異なることから,大江山オフィオライトの構成岩とは成因的に区別することが可能であり,演者は「普甲峠高圧変成沈積岩」という名称を提案している(Tsujimori,投稿中,地質学論集).今回,普甲峠高圧変成沈積岩に記憶された約2GPaに達する高圧変成作用について紹介する.
     普甲峠高圧変成沈積岩はホルンブレンド(チェルマック閃石)+クリノゾイサイト+藍晶石+パラゴナイト+緑泥石+曹長石±十字石±コランダム+ルチル±イルメナイトの鉱物組み合わせで特徴づけられ,2次的な産状のマーガライト,パラゴナイト,マスコバイト,緑泥石,斜長石(An24-37)がそれらを置換する.特に,クリノゾイサイト中の包有物として藍晶石・パラゴナイト・曹長石が産することから,そのピークの変成条件は藍晶石+クリノゾイサイトの安定領域において,藍晶石+曹長石及びパラゴナイトが安定な狭い領域(Pg + Qtz = Ab + Ky + H2Oの高温側,Pg = Jd + Kyの低圧低温側,Jd + Qtz = Abの低圧高温側)に限定される.THERMOCALC(ver. 2.5)を用いた計算から,その領域が750〜800℃において1.7〜2.2GPaといった高圧の変成条件を示すことが明らかになった.また,藍晶石とクリノゾイサイトの間には,しばしば後退変成作用の際の分解反応によってマーガライトと斜長石(An24-37)が形成されており,Czo + Ky + H2O = Mrg + Anの反応(1.1GPa,530℃から1.3 GPa,622℃の間)を横切るようなその減圧(上昇)経路を示している.なお,クリノゾイサイト中の包有物として産する初生のパラゴナイト-マスコバイトの組成ギャップは,藍晶石を置換する後退変成作用時のパラゴナイト-マスコバイトのギャップと比べ明らかに狭く,減圧過程での冷却を示している.
     大江山オフィオライトの溶け残りかんらん岩やそれを貫く斑れい岩〜ドレライト岩脈には変成沈積岩と同様の変成作用の証拠が全くない.普甲峠変成沈積岩体は大江山オフィオライトの地殻下部層序の一部と考えられてきたが,その岩石学的な特徴から大江山かんらん岩体とは履歴の異なる高圧型広域変成岩のブロックであって,構造的に大江山オフィオライトの溶け残りかんらん岩体に取り込まれたものであろう.この変成沈積岩からは426MaのK-Arホルンブレンド年代が報告されており(仁科・石渡・板谷,1990,地質学会演旨),その年代を変成沈積岩の冷却年代と解釈するなら,約2GPaに達するような高圧変成作用は少なくとも古生代前期以前の変成作用ということになる.このような高圧中温の変成作用は沈み込み帯域深部でのみ達成され,普甲峠変変成沈積岩は黒瀬川帯の古生代前期の結晶片岩と同様に,古生代前期以前の沈み込みの証拠となる.
     この変成沈積岩体には,まれにスピネルグラニュライトの残晶として,Alに富む単斜輝石とスピネル仮像(コランダム+マグネタイトシンプレクタイトによって置換されている)が保存されており(辻森・石渡,1998,年本学会ポスター発表),変成苦鉄質沈積岩類の全岩化学組成(主要・微量・REE元素)及び計算されたノルム鉱物は,灰長石に富み非常に分化したトロクトライト的な深成岩体の一部であったことを示唆する(Tsujimori, 投稿中,地質学論集).普甲峠変成沈積岩は,かつてスピネルグラニュライト相の条件下で再結晶した斜長石型沈積岩体(おそらく,分厚い海洋地殻下部)であったが,沈み込み(あるいは衝突)に伴い約2GPaの高圧変成作用を被り,その後,上昇したともの考えられる.普甲峠変成沈積岩の減圧経路は,ノルウェーのWGRや中国の大別山に産する超高圧変成岩の減圧経路のいくつかに似ており,また,グラニュライト相から変成ピークへのloading経路は,カレドニアやアパラチアなどの大陸衝突型の造山帯の変成岩から報告されている.普甲峠変成沈積岩の高圧変成作用及びその減圧経路は古生代前期の沈み込みの開始にともない,グラニュライト相に達する海洋地殻を有するような海台あるいは微大陸の衝突を意味しているのかもしれない.
    (謝辞:名古屋大学理学部の榎並正樹先生のご教示に感謝いたします.)


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    Multi-Series Volcanic Rocks of Anamizu Formation, Uchiura-Noto Area, Noto Peninsula

    J.C.Lopez and A. Ishiwatari (Dept. Earth Sci., Kanazawa Univ.)

    In the Uchiura-Noto area, Anamizu Formation is composed of lavas and minor volcanic breccia and red mudstone. The base of the sequence is not exposed in the area. Three rock series have been found: tholeiitic, low magnesiam calc-alkaline (LMCA) and bronzite andesite.
    Tholeiitic series rocks, represented by basalt (52 SiO2 wt.%) and basaltic andesite (53-57 SiO2 wt.%), contain phenocrysts of plagioclase, olivine (altered) and augite (Mg# 65 to 75), although sometimes aphyric. Quartz is present in the basaltic andesite groundmass as a trace component. The rocks are higher in FeO* (7-10 wt.%) and lower in MgO (especially in basaltic andesite:
    LMCA rocks include basalt (52.5 wt%) and basaltic andesite (53-57 wt%), containing phenocrysts of plagioclase, olivine (less altered), augite (Mg# 75-80 in basalt and 72-77 in basaltic andesite) and bronzite (Mg# 79-80). They have intersertal and seriated textures. MgO (4-6 wt.%), K2O (0.7-1.8 wt.%) and Rb (
    Bronzite andesite is distinctly aphyric (>90% groundmass) and shows trachytic texture. This series contains bronzite (Mg# 82-86) as the dominant phenocryst phase, with minor plagioclase and augite (Mg# 69-74). The groundmass consists of plagioclase, orthopyroxene, clinopyroxene, opaque minerals, and dark brownish glass (less than 30%). This andesite has 60-61 wt.% SiO2, and is higher in MgO (3.5-4.4 wt.%) than LMCA andesite so far reported from Noto Peninsula (Nakagawa, M., 1980, Yamada, H., 1985, Kanazawa University, Master Thesis). Sr contents (
    Bronzite andesite, in this area, is relatively richer in K2O (1.7-1.9 wt%) and Rb (66-68 p.p.m.) and poorer in Ni and Cr than other bronzite andesites of Noto Peninsula, like at Terabun (Hoshina, 1984), Shinobu (Uematsu, Shuto & Kagami, 1995), and Hegura-jima and Nanatsu-jima islands (Sato, 1989), all of which have K2O
    In the area, bronzite andesite occurs at the higher levels of the sequence, overlying LMCA rocks.
    Even though there are some different petrographical and chemical characteristics between tholeiitic and LMCA series (absence of orthopyroxene phenocryst and higher FeO* and FeO*/MgO ratio in the former), some of their trace element concentrations (Ba and Sr) are roughly the same. Moreover, TiO2/K2O ratios (tholeiite 0.8-1.1 and calc-alkaline 0.6-1.1) are very similar, suggesting not much different magmas and relatively anhydrous condition of their genesis (Okamura & Yoshida, 1989). However, more magnesian calc-alkaline andesite can not be produced from less magnesian tholeiitic basalt through fractional crystallization. Mixing of fractionated SiO2-rich tholeiitic magma or assimilation of granitic crustal material by the primitive tholeiitic magma may have produced the calc-alkaline rocks.
    In contrast, bronzite andesite have petrographic and chemical characteristics (abundance of phenocrystic bronzite, absence of olivine, high MgO content and distinctive trace elements signatures) far different from tholeiitic and LMCA series. In addition, TiO2/K2O ratio of bronzite andesite (


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    能登半島北西部、黒崎火山岩類の地球化学的特徴;高カリウム系列火山岩の結晶分化作用

    近藤美紀・石渡 明

    Geochemical characteristics of Kurosaki volcanic rocks in northwestern Noto peninsula; Fractional crystallization of high-K series

    Miki Kondo and Akira Ishiwatari (Dept. Erath Sci., Kanazawa Univ.)

     高カリウム系列に属する岩石はその存在は限られているものの様々なテクトニックセッティングに分布している(Tatsumi and Koyaguchi , 1989 ;Peccerillo , 1992 )。日本における高カリウム系列火山岩の例としては、北海道渡島大島及び十勝岳(例えば森, 1977 ; Katsui et al. , 1989)、阿蘇山(小野・渡辺, 1983)などがあり、隠岐島後からはさらにK2Oに富むショショナイト系列の岩石が報告され(小林・沢田, 1998)、北陸地方においても石渡・大浜(1997) による岩稲類層中のショショナイト系列玄武岩の報告がある。今回議論する能登半島の黒崎火山岩類も高カリウム系列火山岩のひとつである。
     石川県能登半島北西部に産する黒崎火山岩類は玄武岩質安山岩溶岩、安山岩溶岩、及びそれを貫くデイサイト岩脈で構成される(近藤・石渡, 1998;地質学会演旨, p168)。柴田ほか(1981)は安山岩の全岩K-Ar年代として8.64±0.64Maを報告した。玄武岩質安山岩は下部に自破砕溶岩の様相を呈し、斑晶鉱物としてかんらん石、斜長石、単斜輝石、斜方輝石、チタン磁鉄鉱を含む。かんらん石は周りをイディングス石で置き換えられているものの、比較的よく残存しており変質は少ない。安山岩は普通角閃石斑晶を含むものと含まないものに大別され、そのほか斜長石、単斜輝石、斜方輝石、チタン磁鉄鉱を含む。デイサイトは斑晶として斜長石、斜方輝石、普通角閃石、チタン磁鉄鉱を含むが石英斑晶は含まない。黒崎火山岩類の地球化学的特徴として着目すべきはK2Oに富むことで、Peccerillo and Taylor (1976)の分類では高カリウム系列に属する。鉱物の晶出順をみても、黒崎火山岩類はデイサイトの段階でも石英斑晶を欠き、カリウム含有量の高いマグマ系列ほど石英の晶出が遅れる特徴(巽, 1995)に合致する。 K2O以外の成分としてはAl2O3に比較的よく富んでいる。
     能登半島には高マグネシア安山岩やアダカイト様安山岩など様々な特徴をもった火山岩が報告されているが(上松ほか, 1995)高カリウム系列に属するものは非常に少なく、SiO2に不飽和なアルカリ岩の報告はない。黒崎火山岩類は玄武岩質安山岩〜デイサイトまでほぼ高カリウム系列に属する点で特徴的である。しかもこれらは下位ほど未分化な岩石が存在する層序、主要元素の組成変化が示す一連の傾向及びすべての分化ステージの希土類元素パターンが示す同様の傾きより、単一の親マグマの結晶分化作用によって生成されたと考えられる。このことは結晶分化作用のモデル計算からも支持され、マグマ混合の影響は少ない。また各岩石が新鮮で斜長石や角閃石の斑晶もK2Oに富むことから、二次的な影響でK2Oが付加したのではない。黒崎火山岩類中でもっとも未分化と考えられる玄武岩質安山岩中のかんらん石のFo値は73と低く、この段階で既にかなり分化が進んでいたことを示す。
     玄武岩質安山岩と安山岩の斜長石斑晶はAn成分に富み、ときにAn90を越える。このような非常にカルシックな斜長石を生成するマグマとして、Sisson and Grove (1993)はH2O含有量の高いマグマを考えた。黒崎火山岩類の親マグマも同様に高い含水量をもったマグマである可能性が高い。このことは高カリウムのマグマほど含水量が高い(巽, 1995)とする考えと矛盾しない。
     高カリウムマグマの起源としては、K2Oに富む地殻物質との混染(Peccerillo, 1992)や金雲母かんらん岩の部分溶融(Tatsumi and Koyaguchi, 1989 ) などが考えられている。黒崎火山岩類の基盤岩は飛騨片麻岩類で特にK2Oに富んではおらず、地殻物質の混染だけでこのような高カリウムマグマが生成されたとは考えにくい。また含水マグマという点では調和的であるものの、金雲母かんらん岩の部分溶融を直接支持するような証拠は得られていない。 10Ma以降は西南日本のアルカリ火成活動が盛んな時期であり、8Maの黒崎火山岩類もこれに関連したアルカリに富むマグマから形成された可能性がある。


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    SUPERPLUME-RELATED OPHIOLITES AMONG WESTERN PACIFIC ACCRETIONARY COMPLEXES: EXAMPLES FROM KORYAK MOUNTAINS, NORTHEASTERN RUSSIA

    Akira ISHIWATARI (Dept. Earth Sci., Kanazawa Univ. 920-1192 JAPAN)*, Sergei D. SOKOLOV (Geol. Inst., Rus. Acad. Sci., Moscow 109017 RUSSIA), Daichi SAITO*, Tatsuki TSUJIMORI* and Sumio MIYASHITA (Dept. Geol., Niigata Univ. 950-2181 JAPAN)

    Superplume magmatism may have unique geochemical and isotopic signatures such as high Ti/Al and HIMU. However, most ophiolites have been proved to be of supra-subduction zone (SSZ) origin, and there may be little chance to find big fragments of superplume-induced oceanic edifices among them, although some small fragments of such edifices may occur as clastic fragments, melange blocks or high-pressure schists in the accretionary complexes. On the other hand, the superplume magmatism increases production rate of the oceanic crust, accelerates plate movement, and activates supra-subduction zone magmatism. Higher degrees of mantle melting and thicker development of mafic (and silicic) crust are expected for island arcs and marginal basins produced during the superplume periods. Ophiolites, like granites, may provide such "indirect" evidences for ancient superplumes.

    The Koryak Mountains comprise an accretionary (Pacific-type) orogenic belt, which has been developed aside the eastern margin of the Kolyma-Omolon continental block. The Okhotsk-Chukotka volcanic belt, a volcanic arc with abundant granite intrusions, formed along the southeastern continental margin during Cretaceous time. However, the granite intrusions are scarce, and ophiolite complexes are abundant in the adjacent Koryak Mountains. The accretionary complexes are mainly composed of dark-colored clastic fragments of mafic-intermediate igneous rocks originated in oceanic crust, oceanic island arcs and seamounts, and often include exotic blocks of older chert and limestone. Nappe structure is developed among the accretionary complexes, where older rocks tend to occupy upper structural position. Turbidite (flysch) and molasse sedimentation migrated toward the southeast from late Jurassic to Tertiary.

    The distribution, age and petrologic characteristics of ophiolites in the Koryak Mountains were first summarized by Palandzhjan (1986; Tectonophysics, 127, 341-). He stressed wide range of ophiolite ages (at least, early Paleozoic through Cretaceous) and wide petrologic diversity of ophiolitic mantle peridotite (lherzolite [type B; Mg#90], pyroxene-rich harzburgite [type A; Mg#91], and pyroxene-poor harzburgite [type C; Mg#92]) and gabbro (troctolite series and norite series) in this area. We have carried out several field expeditions to the Koryak Mountains during the recent nine years. Due to logistic difficulties, our field studies were limited in the three areas; Mainits zone, Taigonos Peninsula, and Anyui zone. Our observation and previous data on the ophiolite bodies in the Koryak Mountains are summarized below.

    1. Mainits zone, central Koryak Mountains [studied by A.I. and S.D.S., helped by Dr. A. Stavsky during the Soviet "Geodyanmics Seminar" in 1990 ] (from NW to SE):

    (1) Tamvatney lherzolite body. Not yet examined by us, but occurrence of "eclogite" and "diamond" was noted. Fertile lherzolite (spCr#20) and lherzolitic harzburgite (spCr#35) are present (Dmitrenko et al. 1990).
    (2) Yagel serpentine melange. lherzolite (spCr#35), gabbro, sheeted dikes, pillow lava.
    (3) Krasnaya Gora harzburgite nappe. Depleted harzburgite (spCr#75-80) with opx-rich ultramafic cumulates (Dmitrenko et al. 1985)
    (4) Srednaya Gora residual dunite body. Strongly foliated dunite with Cr#85 spinel, associated with island-arc gabbronorite-amphibolite bodies.

    2. Taigonos Peninsula, southern Koryak Mountains [studied by A.I. and S.D.S. in 1995 and by all of us in 1997] (from NE to SW along the eastern coast):

    (1) Elistratova ophiolite: an island-arc ophiolite (spCr#55 harzburgite, opx-rich cumulate, arc-type gabbronorite with An>90 plagioclase, arc-tholeiite sheeted dikes) intruding into southern oceanic mantle (spCr#40 harzburgite).
    (2) Kengeveem River gabbro: MORB gabbro with Mg#80 cpx and An=60 plagioclase.
    (3) Cape Nablyudeniy: depleted harzburgite (spCr# 80) and meta-pillow lava
    (4) Cape Povorotnyi: ophiolite melange with lherzolite bodies (spCr#20) and garnet amphibolite blocks (Silantユev et al., 1996; Gelman and Nekrasov, 1968).

    These ophiolites belong to Penzhina-Pekulney belt (Palandzhjan, 1986), and were accreted to the Uda-Murgal island arc by the early Cretaceous time (Sokolov, 1992). Kuyul ophiolite is the biggest in this belt, and Pekulney ophiolite in the northern end contains layered garnet-bearing metagabbro and ultramafic rocks (Nekrasov, 1978).

    3. Anyui zone, a northeastern margin of Kolyma-Omolon continental block which was collided by Chukotka-Wrangelia microcontinent [studied by A.I. and S.D.S. in 1998 ]

    (1) Paleozoic or Mesozoic Aluchin ophiolite, cpx-bearing harzburgite with Cr#82 chromitite-wehrlite-noritic gabbro-sheeted dikes-basalt. (Lychagin, 1985)
    (2) Middle Paleozoic(?) Gromadnenskiy layered gabbronorite complex associated with late Paleozoic(?) Vurguveem tonalite complex and Cretaceous(?) troctolite bodies. (Lychagin et al, 1991). However, the troctolite bodies look like layers in the gabbro.

    Characteristics of the circum-Pacific Phanerozoic multiple ophiolite belts, as exemplified above by the Koryak Mountains, are summarized as follows.

    1. Juxtaposition of ophiolites of widely varying ages ranging from early Paleozoic to late Cretaceous (to Tertiary in Japan, Taiwan, Chile, Philippines, Indonesia, etc.).
    2. Juxtaposition of ophiolites of diverse petrologic nature (fertile lherzolite-type and highly depleted harzburgite-type) as in the Mainits zone and Taigonos Peninsula.
    3. Presence of highly depleted mantle peridotite (HDMP; cpx-free harzburgite or dunite) with Cr#>=80 spinel in association with orthopyroxene-type cumulate. Similar HDMPs are known from only a few places such as Papua New Guinea, Tasmania and Hokkaido, and are almost restricted to the western Pacific margins.
    4. Occurrence of thick gabbroic nappes including spinel- or garnet-bearing mineral assemblages (e.g. Pekulney), or accompanying abundant tonalite (Gromadnenskiy-Vurguveem). Such gabbroic nappes are better developed in southwestern Japan and Sikhote Alin, and are also reported from Alaska.

    These features may be related to the superplume surges and subsequent global magmatic pulses of at least two times in early Paleozoic and late Mesozoic.


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