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角間キャンパス岩石散歩
(石渡先生作成)


Kanazawa University
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卒業生の声


土屋健 / Ken, TSUCHIYA
荒川浩樹 / Hiroki, ARAKAWA
阿部なつ江 / Natsue, ABE

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1.帝国石油 (株)※ 技術評価部の荒川です

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私は帝国石油㈱の技術評価部に勤務する荒川です。2006年6月現在、エジプトを中心として石油・天然ガスの探鉱に従事しています。私は1999年3月に立命館大学卒業後、同年4月より金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程に入学し、その後2年間在籍しました。ここでは主に金沢大学への入学を希望されている高校生の皆さん向けに、「大学院で何を学び、会社でそれがどう役立っているのか」についてご紹介いたします。

2.金沢大学でのカルチャーショック

私は立命館大学では主に物理学全般(量子力学や物性物理学など)を学んでおり、地学(地球物理学のみ)を学んだのは研究室に配属された3年生後期からでした。その後、金沢大学大学院に来て驚いたことは地学に関する様々な分野の先生・学生(地球物理学のほか、火山学、岩石学、地球環境学および古生物学など)が在籍されていることです。大学院在籍中に様々な分野の講義を受けることができたほか、分野の異なる同期の学生と交流・議論しあうことで、同じ地球をテーマにしても、様々な見方・考え方があることを知り、大いに刺激されました。あと、立命館大学と比較して金沢大学は一人の先生が担当される学生の数が少ないため、きめ細やかな指導を受けることができたと喜んでいます。

3.大学院での研究:地震発生場の物性と地震活動

大学院では地震発生場の物性と地震活動の関係について研究しました。具体的には微小地震の多発地帯である丹波山地(琵琶湖西方)において、地下の物理量(地震波速度、ポアソン比)と地震活動度の指標であるb値(マグニチュード別地震頻度分布)の関係について研究しました。その結果、地震波速度とb値の3次元構造の比較から、ポアソン比とb値の間に弱い負の相関があることが分かりました。
 さらに数値計算による地震活動のシミュレーションを行い、断層面のすべりにくさ(動摩擦パラメータ)とb値が負の相関をもつことが分かりました。これは定性的には、断層面がなめらかであれば(つまり流体が存在すれば)断層はすべりやすく、また、すべりが促進される、(つまりb値が小さくなる)ことを意味しています。このことから、地下水が多いところ(ポアソン比が大きい)では断層面が滑りやすく、比較的大きな地震を発生しやすい(b値が小さい)のではないかということが分かりました。

4.仕事に活きる大学院での経験

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大学院時代に学んだ地震波速度(Vp,Vs,Vp/Vs)、ポアソン比などの物理量は地下の地質、物性を解釈する上で重要なものであり、現在の業務でも頻繁に用います。なお、油と水ではこれらの物理量に大きな差はありませんが、ガスと水では大きな差があり、天然ガス探鉱ではこれらの物性値が急激に変化するところを探します。
 また、大学院時代の研究活動を通して得た科学的な物の見方・考え方(論理的思考)や研究成果のまとめ方およびプレゼンテーション方法なども業務で大変役に立っています。

5.世界を飛び回る物理探査のエキスパートへ

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会社での仕事内容は地下に眠る石油および天然ガスを私の専門である物理探査手法によって探すことです。ここで物理探査手法とは地上で人工的に発生させた波(弾性波)を地下に送りこみ、地層境界等で反射してくる波を地上で受振した後、これを処理・解析することで地下の様子を明らかにしようとする科学的手法です。最近では地下の様子を3次元的にかつ定量的に評価する物理探査手法がさかんに行われており、本手法の石油・天然ガス探鉱における役割が非常に大きくなってきています。<
 私はこれまで日本国内(秋田、新潟)をはじめ、エジプト、ベネズエラおよびベトナムでの探鉱活動に参加してきました。昨年度はエジプトの灼熱の砂漠の中で地下のデータを取ってきましたが、イスラム文化にも触れることができ、貴重な体験ができました。今秋にはそのデータを基にエジプトで井戸を掘ることになっていますので、この結果が楽しみです。

6.学部、大学院、そして社会へ

最後に理系大学を希望される皆さんに申し上げたいことは、将来、技術者もしくは研究者を目指すならば、出来るだけ大学院まで行って頂きたいということです。すなわち学部を卒業して学生生活を終えるのではなく、大学院で専門的な研究活動をするための準備期間と位置づけ、しっかり勉強し、大学院で高度な専門性を身につけてほしいということです。大学院での経験はきっとこれからの人生の核となると思います。

現在の項目:

1.帝国石油 (株) ※技術評価部の荒川です
2.金沢大学でのカルチャーショック
3.大学院での研究:地震発生場の物性と地震活動
4.仕事に活きる大学院での経験
5.世界を飛び回る物理探査のエキスパートへ
6.学部、大学院、そして社会へ

※現国際石油開発帝石(株)