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(石渡先生作成)


Kanazawa University
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寺田君(平松研)の2011年米国地球物理連合秋季大会参加報告


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1.American Geophysical Union Fall Meeting 2011

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American Geophysical Union (AGU:米国地球物理連合) Fall Meetingとは、毎年クリスマス前にアメリカのサンフランシスコで開催されている大規模な地球物理学(地球科学の広い分野をカバーしている)国際学会のことです。AGUには135か国から50,000人が所属しており、AGU Fall Meetingの発表件数は1万件以上に上るという地球物理学の分野では世界最大の学会です。この学会では、研究発表以外にも企業出展ブースや様々な懇親会などのイベントも多数開催されています。今回私も、2011年12月5日~9日(滞在期間は1週間)の期間にこの学会に参加しましたので、学会の様子やそこでの自分の研究発表について紹介します。

 写真:サンフランシスコのユニオンスクエア。巨大なクリスマスツリーとスケートリンクがあります

2.学会の様子

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学会はMoscone Center というとても大きな会場で行われていました。会場に入るためにはAGUの名札をしなければいけないのですが、開催期間中は会場の中はもちろん、会場の周辺やサンフランシスコの街中でもAGUの名札をしている方や、ポスターケースを持っている方が多くみられ(そのおかげで初めてでも迷うことなく宿泊先から会場まで向かうことができました)、この学会の規模の大きさに改めて気づかされました。会場に入ると、複数設置されている机にパソコンを置き、活発に議論をしておられる方々や、机が全く足りていなかったので、床に座り込んで議論されている方々も多くみられました。私は、そのような光景に同じ研究をしているものとして大変刺激を受けました。私は自分の発表以外の時間は事前にチェックしていた研究発表を聴いて回りました。例えば、沈み込み帯での地震波速度異方性の研究や沈み込み帯におけるマントル対流の実験に関する研究、沈み込むスラブからの脱水に伴って形成される蛇紋岩に関する研究などです。このように自分の研究に活かせそうな発表を聴いているときは、「この結果と自分の研究を照らし合わせるとどんなことが考えられるのだろうか」などと自問自答し、大変有意義な時間を過ごすことができました。
 
写真:学会のポスター会場

3.研究発表

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私の研究は九州地方下の沈み込み帯(マントルウェッジ)において地震波速度異方性というものを地震波形から検出し、地球内部の構造について考察するというものです。私の発表は学会3日目である7日の朝からでした。そのため、1日目や2日目の夜には、少しでも不慣れな英語でのコミュニケーションを改善するため、発表のための原稿の練り直しや、実際に口に出しての発表練習をして7日の発表に備えました。当日は緊張のあまり最初は言葉がつかえてしまうことが多々あり、うまく相手に伝えることができませんでしたが、回数をこなすうちにスムーズに話すことができるようになりました。また、複雑な部分は、その場でノートに図などを書き込んで説明することによって相手にうまく伝えることができました。発表中は日本人の研究者の方も数人発表を聴きに来てくださり、私の研究結果からどのような議論ができるのか(例えば沈み込み帯の温度構造と地震波速度異方性の関係など)について一緒になって考えてくださいました。このように多くの方と意見交換・議論することで自分の研究に対する理解が非常に深まったことを実感しています。 
 
写真:実際に私(青い服)が発表している様子

4.おわりに

今回サンフランシスコを訪れ、AGU Fall Meetingに参加し、研究発表をすることによって、人生において最初で最後かもしれないくらいの貴重な体験をすることができたと実感しています。また、それによって地球科学というものの面白さ、奥深さ、未知の可能性を再認識しました。様々な大学の様々な国籍をもつ先生方や研究者、学生とコミュニケーションをとり、研究について議論することは容易なことではありませんし、言語も文化も異なる環境で生活することは不安もあり、精神面での強さを必要とします。しかし、だからこそ、このような経験を通して人は成長していけるのではないかと私は思います。このような研究者としても一人の人間としても成長できる機会を与えられたことに非常に感謝しています。

 

現在の項目:

1.American Geophysical Union Fall Meeting 2011
2.学会の様子
3.研究発表
4.おわりに

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