研究テーマ
「造岩鉱物の変調構造とイオン置換の関係の解明」を大きなテーマとし,研究を行っています.
現在行っている研究
● 準長石族鉱物を用いた変調構造とイオン置換の関係の解明および一般化
● ネフェリンの変調構造の形成要因の特定
● 温度,圧力を変えた時の変調構造の変化
● 様々な生成条件下でできた準長石族鉱物の構造と生成条件の関係解明
● 核マントル境界におけるウスタイト及びフェロペリクレースのスピン状態の解明
● 北陸および信越地域に分布する鉱床の研究
ネフェリンの結晶構造に関する研究
ネフェリンはフレームワークケイ酸塩です.
大きいサイズの陽イオンが自由に行き来できるchannelとO1原子が統計的に3つの位置に分裂する構造を持ちます.
変調構造を顕著に示す鉱物として知られていますが,島根県浜田市のアルカリ玄武岩中の晶洞で見つかった単結晶は電子線回折や単結晶X線回折測定を行っても衛星反射など変調構造を示すデータは得られませんでした.
一方,このネフェリンでは他の産地では見られていないmerohedryによる双晶が検出されました.
現在は島根県産のもの意外でも双晶があるかどうか,また変調構造を示す場合に結晶構造のどこが変化しているのかを研究しています.
合成メリライトの結晶構造に関する研究
メリライトは四配位席と配位多面体がシート状に重なっており,それぞれの配位席の歪がシートの重なりに影響することで変調構造が形成されます.
私の博士研究では天然でよく見られる鉄を含むオケルマナイトとゲーレナイトを合成し,4配位席(青とオレンジの席)の中の陽イオンの割合が変わると結晶構造にどのような変化が現れるか,ということを研究していました.
またメリライトも変調構造を顕著に示す準長石族鉱物です.
私が合成した試料でもわずかではありますが,粉末X線回折プロファイルをよく見ると変調構造を示す”肩”が見られました.
まだまだ4配位席に関しても詳しく研究する必要はあると思いますが,現在は学生とともに8配位席(水色の席)に入る陽イオンが変わると構造がどう変化するか,ということについて研究しています.
鉱床学的研究
私たちの生活に必ず必要な金属は,鉱床という有用元素が集まった場所の鉱石から作られます.
ではその鉱石はどうやってできたのでしょうか?
鉱床の形成には地質学的変動が関わってきます.
今はほとんどの鉱山が閉山していますが,その鉱山がどうやってできたか,どういうタイプの鉱床にはどんな有用金属が集まっているのかということが分かれば,今後世界のどこで資源を採掘できるか探す際の重要な手がかりになります
.石川県にも多くの鉱山があり,かつて多くの金属資源・非金属資源が採掘されていました.
しかし鉱山の形成が明らかにされていない箇所もあります.本研究室では鉱山の成り立ちを探る研究を行っています.
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研究の流れ
必ずしもこの通りに進むわけではないですが,目安として鉱物記載と結晶構造解析の場合の研究の流れを示します.
◆ 試料は天然のものと合成のものを目的に応じて選択します.
− 天然試料の場合 ⇒ 試料採取及び地質調査の実施
− 合成試料の場合 ⇒ 試料合成
◇ 対象とする試料をよく観察します.
− 薄片作成
− 偏光顕微鏡観察
◆ 対象鉱物がどんな組成であるか,化学分析を行い調べます.
− 電子線微小部分分析(EPMA)装置を用いた化学分析
* * * * * * * * * * * * * * ↑ ここまでが鉱物記載 ↑ * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
◇ 目的のものを見つけたら(合成できていたら),X線を使った構造解析をします.
試料の形態に応じて,粉末法,単結晶法のどちらかで行います.
− X線回折装置
◆ 分析が正しいかクロスチェックを行います.
クロスチェックで用いる方法は,研究目的によって変わります.
◇ 結果をまとめて論文にします.
その他にもこんな手法を使います.
分光法:57Feメスバウアー分光法,赤外分光法
放射光関連:核共鳴前方散乱法 @ BL10XU,BL11XU
今後やってみたい研究
● 隕石中の準長石族鉱物を用いた,変質が構造に与える影響の解明
● 変調構造の時間的変化
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