小笠原諸島の地質と生い立ち

海底の岩石磁気とプレート

 地球の表面は10数枚のプレートという堅い岩盤でおおわれています。プレートはじっとしているわけではなく,南極の大陸氷河のように年間数cmから20 cmくらいの速度でゆっくりと動いています。プレート同士は衝突したり,片方の下にもう一方が沈み込んだりします。プレートが沈み込む場所が海溝という深い溝です(図3)。日本列島の周辺は4つものプレートがぶつかり合っている場所で,そのために地震や火山活動が盛んなのです。小笠原諸島があるのはフィリピン海プレートの東端です。地球の海洋底には総延長7kmにもなる海底火山の大山脈があり,地球をぐるりと取り巻いています。この山脈を中央海嶺と呼びます。海洋底のプレートは中央海嶺にそって裂けながら両側へ広がっています。中央海嶺では地球内部からマグマが湧き出て,裂け目を埋めるようにして新たにプレートを生み出しているのです。この時テープレコーダー(最近あまり見かけませんが)と同じように,新しく付け加わったプレートはその時々の地球磁場の方向に磁化されます(図3)。方位磁石のN極が地球の北を指すのは,北極がS極に帯磁しているからです。ところが,地球磁場は常に一定しているわけではなく,数万年に一度くらいの割でN極とS極が入れ替わります。そのため中央海嶺で磁化される海洋プレートには地球磁場の反転が地磁気異常の正と負の縞模様として延々と記録されます。そこで,この縞模様を解読することによって,そのプレートがいつ,どのように動いたかという歴史を読みとることができるのです。

3.中央海嶺と島弧−海溝系。中央海嶺で生まれた海洋プレートはその時々の地球磁場の方向に磁化され,ベルトコンベヤーのように移動していき,やがては海溝から沈み込む。