Magma Chamber Project−火山とマグマ供給系

マグマ溜りとは?

 多くの火山の地下にはマグマが一時的に蓄えられる場所があります。これをマグマ溜まりと呼んでいますが,その実体についてはあまり詳しいことはわかっていません。

 火山が噴火する前には,火山体が膨らんだり地震活動が活発になったりします。これは火山の地下浅所にマグマが上昇してくるために起こります。そして噴火の開始とともに,あるいは噴火後に山体は急に収縮します。これは火山体の地下に一時的に蓄えられたマグマが,噴火などによって放出されたためだと考えられます。このような山体の膨張・収縮に伴う地形の変化から火山体のどれくらい下に,どのような大きさのマグマ溜まりがあるか推定することができます。

 また、地震の波には横波(S波)と縦波(P波)などがありますが,横波は液体,すなわち溶けた岩石であるマグマの中を通過することはできません。P波も弱まったり,速度が遅くなったりします。そこで、マグマ溜まりの存在や大雑把な形は,地震波の反射面や減衰,S波の遮蔽などによって知ることが可能です。中央海嶺では,地震波トモグラフィーという,いわば地球のCTスキャンのような方法を用いて,マグマ溜まりのおおよその温度構造や結晶量を推定することに成功しています。しかし,日本のような島弧にある火山では,マグマ溜まりは小さく,地下10数kmから数10kmという非常に深いところにあることが多く,地震波トモグラフィーによってマグマ溜まりの構造を描き出すのは非常にむづかしいのです。

 しかし,噴火によって地表に出てきたマグマは,火山灰や溶岩となります。これらは地下のマグマ溜まりにあったときや,上昇する途中で晶出した鉱物(斑晶や微斑晶)を含んでいます。これらの化学組成や結晶組織をEPMAや電子顕微鏡などを使って調べることにより,その鉱物や組織が形成された時のマグマの化学組成や温度・圧力などを知ることができます。また,地表に露出する深成岩体は,マグマが地下で固結してできたものですから,いわばマグマ溜まりの化石であると言えます。このような岩体の構造や,鉱物の化学組成・組織を調べることによって,マグマ溜まりの内部構造を復元していきます。

主なフィールド: 

火山とマグマ供給系
オマーンオフィオライトに見る高速拡大海嶺系のマグマ溜り

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