Mantle Xenolith Project

 日本海拡大とマントル物質の移動・温度圧力履歴

主なフィールド:  


Mantle Quest ― M2M MoHole Project

 モホール計画:全海洋地殻を掘削し,モホ面を貫通して,人類史上初めてマントル物質を回収する

主なフィールド:  


Mantle Heterogeneity and Recycled Ancient Slab

 先カンブリア時代の融け残りスラブのリサイクルによる上部マントルの不均質性

 従来,リサイクルしたスラブのうち,融け残りカンラン岩についての地球化学的情報源としては,変質の影響を受けやすい海洋底やオフィオライトのカンラン岩しかなかった。しかし,近年のわれわれの研究によって,35〜25億年前の融け残りスラブがリサイクルし,含水下で溶融して無人岩マグマを生じたことが明らかとなった。
 対流する上部マントルには10億年以上も前に沈み込んだスラブの残骸(海洋地殻と融け残りマントル岩)が未だに同化されずに残存するために,メルト成分に富む肥沃なカンラン岩から枯渇したものまでが混在する(e.g., Walker 2016)。この不均質なマントルの代表にインド洋型と太平洋型の2つの中央海嶺玄武岩(MORB)マントル(DMM)がある。Pb, Sr, Hfなどの放射性同位元素に富んだインド洋型マントルの起源は,ゴンドワナ大陸下に沈み込んだスラブの残骸がプルームとともに上昇し,DMMと混じた (Anderson 1982; Staudigel et al. 1991),あるいはゴンドワナ大陸下のリソスフェアや下部地殻がデラミネートし,大陸の分裂とともに広がった(Mahoney et al. 1989; Hanan et al. 2004)などの説があるが,未解明である。沈み込んだ海洋地殻の残骸は,低融点であるために対流する上部マントル中で溶融してMORBやプルームのマグマに取り込まれ,マグマ中の放射性同位元素に富んだ肥沃な成分として検出される(e.g., Sobolev et al. 2007)。
 一方,融け残りマントル岩は沈み込んだスラブの大部分を占めるにもかかわらず,融点が高いため通常のマントルの温度では溶融せず,マグマ組成から検出することはできない。そのためもっぱら構造運動で海底などに露出したかつてのマントル岩を分析することによってのみ,その存在が確かめられてきた(e.g., Lie et al. 2008)。しかし,多くの海洋底マントル岩は変質によって初生的な地球化学的情報が失われており,マントル内のリサイクルした融け残りスラブの岩石学的・化学的性質については,よくわかっていない。
 プレート沈み込み開始というイベントによって通常溶けることのない融け残りスラブが溶融して生じた無人岩は,海洋底カンラン岩からしか得られなかった融け残りスラブの地球化学的データをもたらす新たな情報源となって,今後のマントル不均質性とスラブリサイクルの研究が大きく進展する可能性がある。
 そこで,不均質なマントルを代表するインド洋型マントル分布域の東縁にあたる,太平洋プレート西〜南縁にあるニューカレドニア,パプアニューギニア,フィジーから無人岩と単斜輝石,Crスピネルを含む重鉱物堆積物試料を採取し,無人岩マグマのソースとなった融け残りマントル岩の初生的な同位体組成と部分溶融度(枯渇度)と初生的な同位体組成に基づいて,メルトを分別した溶融年代を推定することを試みている。

 これまでの伊豆ー小笠原ーマリアナ前弧域の無人岩及び原弧玄武岩の研究から,同弧下の上部マントルは,37-32億年前の海嶺下で3.5-4 %のメルトを分離した融け残りレールゾライトと,17-15億年前に19-30%メルトを分別した高枯渇ハルツバージャイトが混在していることがわかってきた。

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