4. 地殻変動データによる能登半島地震の断層モデル

図4.1. 生物指標を用いた海岸隆起量とGPSの地殻変動データから推定された断層モデル(矩形:実線は断層の上端を表す)および気象庁一元化震源データによる地震後1日間の余震分布(グレースケールの丸印)と周辺の活断層分布(灰色実線)。星印は能登半島地震の震央を表す(図はクリックして拡大)。

 上記の海岸隆起量とGEONETによる能登半島周辺域の17地点の地殻変動データを用いてインバージョン解析を行い、断層モデルの推定を行った。推定された断層モデルの走向は58度、傾斜角は53度と南東下がりに傾斜し、余震分布と一致しており(図4.1)、すべり角は139度と地震波の解析から得られた発震機構解とも調和的である。断層面上端の深さは1.5km、南西上端の位置は東経136.59度、北緯37.21度である。断層面の大きさは18.6km×14.5kmで、すべり量は1.3mである。剛性率を30GPaとすると、地震モーメントは1.1×1019Nm(Mw 6.6)であり、モーメントテンソル解で得られている値や他の研究結果とも一致している。この断層モデルから計算される地殻変動量は観測された海岸線の隆起量(図3.2)やGPSによる変位量と良く一致する。

 推定された震源断層の位置と余震の時空間分布の比較から、陸域には対応する活断層はなく、片川ほか(2005)のF14・F15断層の深部延長が震源断層に対応し、F14・F15地塊が隆起する断層運動が能登半島地震の成因であると考えられる(図4.1)。