研究室紹介

[研究内容] 水を介して元素がどのように動くか、あるいは、とどまるかを、室内実験から検討し、物理化学法則に基づいて定量的にモデル化する研究を行っています。研究する動機を得るため、また見出したモデルが自然界に適用できるかを検証するために、フィールド調査や天然試料の分析も行います。

[最近のテーマ]

1. 水質惑星化学
 液体の水の存在は生命に必須の条件です。生物は接触する外環境から液体の水を介して元素やエネルギーを取り込むので、水に溶けた成分の種類と濃度(これを水質とよぶ)は、その生物や生態系を特徴づける最も重要な因子でしょう。このことは、地球上における最初の生命の誕生やその後の進化は、当時の地球上の水質に支配されていたことを示唆します。地球誕生以来、地球上の水質はどのように変化してきたのでしょうか?本研究室では地質記録に残された情報を精密に解読することで、過去から現在にわたる水質成分表(温泉に貼ってあるアレです)を構築する手法開発を行っています。
 また、過去の火星表面には大量の水があったといわれています。さらに木星の衛星エウロパや土星の衛星エンセラダスの表面は氷で覆われていますが、内部には海が広がっているといわれています。地球外生命の存在予測を目指して、水惑星の水質を定量的に明らかにする研究を行っています。

2. 有害元素の移動予測
 なぜ生命に水が必須かというと、水に溶けた有用な成分を生命が利用しているからです。それでは有害な成分が水に溶けていたらどうなるでしょう?有害な成分は有用な成分と一緒に生命に取り込まれ、生体に蓄積した量に依存して健康被害を引き起こします。私たち人類は、有害な物質を環境中に放出することがよくあります。一方、有害な物質が水に溶け込む量は、水質に依存します。特定の水質条件が整っていると、有害元素は水には溶けださず鉱物として不動化したりするのです。本研究室は有害元素の移動性を支配する要因を定量的に理解し、拡散を予測するとともに汚染を浄化するための研究を行っています。

[研究手法]

1. フィールド調査
 水試料や土壌・堆積物試料の採取。現地水質測定。固体試料の分析(逐次選択抽出分析、X線回折、赤外分光、熱分析、XAFSなど)。水試料の分析(ICP-MS、ICP-OES、高速液体クロマトグラフィーなど)。地球化学コード(GWB、MINTEQ、PHREEQCなど)を用いたモデリング

2. 室内実験
 化学反応実験(吸着、滴定、低温合成、変質、溶解)。機器分析(X線回折、赤外分光、熱分析、XAFSなど)。地球化学コード(GWB、MINTEQ、PHREEQC、SUPCRT92, GEOSURF, ETL(MIN)2など)を用いたモデリング

3. 理論
 報告される関係分野の実験データや新たに自前で測定した実験データをまとめ、それらを統一的な理論により定量的に解釈することを目指します。

[使用分析・実験機器]

pHメーター、マルチ水質計高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アミノ酸分析用HPLC、可視紫外分光光度計、ICP-OES、ICP-MS、真空グローブボックス、高速冷却遠心機、自動滴定装置、ミックスローター、多連スターラー、クールスターラー低温インキュベーター、粉末X線回折計、走査型電子顕微鏡熱分析装置フーリエ変換赤外分光光度計、その場減衰全反射赤外分光測定装置、EPMA、LA-ICP-MS、X線分析顕微鏡、XAFSGe半導体検出器

[研究費]

本研究室の研究の大部分は以下の助成によりサポートされています。記して感謝いたします。

平成19年度 (財)三谷研究開発支援財団研究助成 有害一価陰イオン(フッ素・ヨウ素)の鉄酸化物への吸着挙動の評価と予測モデルの作成

平成19年度 金沢大学重点経費若手育成 天然鉱物フェリハイドライトを用いた有害一価陰イオン吸着除去方法の探索

平成19年度 科研費若手(スタートアップ)課題番号19840022 モンゴル・フブスグル湖沼堆積物に認められるモノハイドロカルサイトの生成と安定性

平成19-21年度 (財)原子力環境整備促進・資金管理センター放射性廃棄物重要基礎技術研究 鉄-ベントナイト相互作用のナチュラルアナログ研究

平成20-22年度 科研費若手(B)課題番号20740315 水・酸化物界面における陰イオン表面化学種(スペシエーション)のその場分光観察

平成20-21年度 株式会社金沢大学ティ・エル・オー(奨学寄附金)

平成20年度 株式会社コベルコ科研(奨学寄附金)

平成22年度 科学技術振興機構「特許出願支援制度」

平成22-24年度 (独)日本原子力研究開発機構先行基礎工学研究(共同研究) 坑道内水質モニタリング装置を用いた原位置固液分配係数の測定 

平成22年度 株式会社摩郷(共同研究)「モノハイドロカルサイトと珪藻土等との配合に関する研究」

平成23年度 科学技術振興機構「特許出願支援制度」

平成23年度 クニミネ工業株式会社(奨学寄附金)

平成23年度 株式会社摩郷(奨学寄附金)

平成23-25年度 科研費挑戦的萌芽研究 課題番号23654184 準安定炭酸塩鉱物の水溶液中における相転移挙動のその場分光観察

平成23年度 金沢大学重点戦略経費(研究活性化推進経費(重点研究経費)) 先進的表面錯体モデリングを用いた酸化物への陰イオン吸着予測モデルの構築

平成23年度 公益財団法人原子力安全研究協会(受託研究) 川崎鉱山のナチュラルアナログに基づくオーバーパック/緩衝材相互作用の影響評価

平成23年度 ナチュラルコンサルタント株式会社(奨学寄附金)

平成24年度 金沢大学戦略的研究推進プログラム(科研費採択支援@大型・中型研究費採択支援) 地球表層物質による生体必須主要元素の吸着予測モデル

平成24年度 ニッセイ財団環境問題研究助成(代表者:北台紀夫) 土壌有機物へのセシウム吸着挙動についての定量的評価法の確立

平成24年度 JAEA-NIMS共同研究「粘土鉱物に対する放射性物質への吸脱着機構解明と減容法の開発」 のうち「吸着メカニズム・モデルの検討」

平成25-26年度 科研費新学術領域研究(研究領域提案型) 公募研究 課題番号25110506 福島第一原発周辺に分布する土壌粘土鉱物によるセシウム脱離予測モデル

平成25年度 金剛建設株式会社(奨学寄附金)

平成25年度 株式会社ダイヤコンサルタント(奨学寄附金)

平成25年度 深田地質助成(代表者:北台紀夫) 高温水溶液中におけるオキソ陰イオンの吸着挙動その場分光観察

平成25年度 金沢大学戦略的研究推進プログラム(科研費採択支援@大型・中型研究費採択支援) 地球表層物質による生体必須主要元素の吸着予測モデル

平成25年度 日立化成株式会社(共同研究)  

平成26年度 金沢大学戦略的研究推進プログラム(基盤形成型) 鉄酸化物による超微量ウランの吸着:バイカル集水域古代湖堆積物を用いた古環境解析

平成26年度 クニミネ工業株式会社(奨学寄附金)

平成27-28年度 科研費若手(B)課題番号15K21019 鉄酸化物による超微量ウランの吸着:バイカル集水域古代湖の水質変動復元

平成27年度 金沢大学戦略的研究推進プログラム(基盤形成型)海外連携支援 モンゴル塩湖におけるヒ素の環境動態:モンゴル国立大学とのJICA-MJEED共同研究のための予備調査

平成27年度 クニミネ工業株式会社(奨学寄附金)

平成27年度 ナチュラルコンサルタント株式会社(奨学寄附金)

平成29-33年度 科研費新学術領域研究(研究領域提案型)課題番号17H06458 水惑星学創成に向けた分子地球化学分析

平成29-30年度 公益財団法人住友財団環境研究助成 モンゴル国エルデネト鉱山周辺の土壌・堆積物における有害元素の存在状態

平成30-32年度 科研費新学術領域研究(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)))課題番号18KK0296 モンゴル国エルデネト鉱山周辺の堆積物におけるモリブデンの化学形態と溶出性