金沢大学理学部地球学科 石渡 明

English  岩石クイズ 薄片鉱物鑑定表 伝言板 石渡ページ 石渡研究室ページ 地球学科ページ


 図書館の書庫にもぐって文献を調べていたら,約40年前の地学研究という雑誌(日本鉱物趣味の会発行)に,「クイーズ大学」というペンネームで「岩石鉱物クイズ」が載っているのをみつけました(13巻5号127頁,1962年).これ以後40年間の日本語の変化を痛切に感じるクイズ問題なので,ここに再録します.

 クイズ問題の解き方は次のようです.「次に列記した意味のことを,昔からよく岩石鉱物やそれに関係のある言葉で言い表わします.その言葉を思い出して下さい.たとえば,『 どんな苦労をしても,是が非でも』という問題だったら,「石にかじりついても」と答えればよいのです.10秒たってできなかったら,次の問題に移って下さい.全部で10問.そのうち6問できれば及第です」.さて,皆さんは何問正解できますか.私は2問しかできませんでした.

 

問題 (解答はすぐ下にあります)

(1) まけおしみの強いこと.

(2) 一念を打込んで事に当れば,どんなことでもできるということ.

(3) 丈夫な上にも丈夫にすること.

(4) 辛抱(しんぼう)すれば必ず成功するということ.

(5) 義のため名のために死ぬとも,徒(いたずら)にいきのびて平凡な生涯は送りたくないということ.

(6) 危いことの甚(はなはだ)しいこと,浮上がれぬこと,必ず滅びること.

(7) 進退きわまること.

(8) 少しも感応せぬこと.

(9) 天性有為の才能を有していても,学問の修養を積まなければ,事をなし名をあげることのできぬこと.

(10) ききめのないこと.


 

 

解答

(1) 「石に漱(くちそそ)ぎ流に枕す」

 晋の孫楚が「石に枕し流れに漱ぐ」と言うべきを,「石に漱ぎ流れに枕す」と誤って,「石に漱ぐ」とは歯を磨くこと,「流に枕す」とは耳を洗うことと強弁した故事に基く(世話新語排話).夏目漱石の雅号もこれに由来する.

(2) 「石に立つ矢」

 李広が出猟した時,夜草中の石を見て虎と思って射たが,鏃は勿論,矢の根まで石に入ったという故事(史記,李将軍伝).

 (石渡の意見)現在では,文頭の例文に出てくる「石にかじりついても」という言い方をこの意味で使う場合もあり,「一念岩をも徹す(とおす)」とか「一念石をも砕く」という言い方もポピュラーです.そういう言い方は国語辞典にも出ていますが,きちんとした出典がある言葉かどうかはわかりません(上の故事を誰かが言い換えたものでしょうか).しかし,上の史記の説明だと,どうも「一念を打込んで事に当った」というよりは,「夜に岩を虎と見間違えた」,「恐怖に駆られて釈迦力になった」という失敗談のように聞こえます.

(3) 「石で根継ぎ」

 胸算用に「柱も朽ちぬ時より石で根継ぎをして」とある.

(4) 「石の上にも三年」

石の上でも三年つづけて坐れば暖まる.

(石渡の意見)これは現在でもよく使われる言葉です.

(5) 「玉となって砕くとも,瓦となって全からじ」

北斉書元景安伝に「大丈夫寧可玉砕,何能瓦全」と.

(石渡の意見)・・・・・・・クイーズ大学氏は恐らく太平洋戦争の激戦地で辛酸を嘗めたのでしょう.

(6) 「石を抱いて淵に入る」

(7) 「石で手を詰む」

狂言 昆布布施に「石で手を詰めたようなことじゃ」

(8) 「石に鎚(つち)」

(9) 「玉琢かざれば器をなさず」 礼記学苑, 「玉磨かざれば光なし」 実語教.

(石渡の意見)最近は「玉」を「金剛石」(ダイヤモンド)に置き換えて言う人が多いようです.ただし,最後まできちんと言う人は少ないようです.

(10) 「石に灸(きゅう)」または「石に針」

 


2003年01月29日作成,2003年07月31日更新

もどる