ハワイの玄武岩

 ハワイの島々はホットスポットの火山活動で形成された、海面下に大きな裾野を広げる巨大火山です。このホットスポットは、海洋 プレートの下のマントル以深にマグマ起源があるため、非常に長期間に渡って地球表面の不動点でありました。北西方向に移動する太平洋プレートの上には、い わばホットスポットの焦げ痕として、天皇海山列、ハワイ海嶺、ハワイ群島といった海山・海洋島の連なりが形成されています。そのうち地表最古の明治海山の 年齢はおよそ7000万年で、もうすぐアリューシャン海溝に沈み込もうとしています。一方ハワイ島では、ホットスポット特有の火山岩が現在も噴出していま す。ハワイは活火山ならではのアツアツのホットスポット情報が得られる、貴重な場所です。
 幸運にも、ハワイ島を訪れた友人に火山レキの欠片(スコリア)を譲って頂いたので、薄片にしてみました。一体どんな世界が見られるのかと期待しながら、 偏光顕微鏡をのぞきました。

岩石の肉眼観察

 岩石は黒色かつ多孔質で、長径数mmの偏平な空隙が無数に有ります。このような岩石を玄武岩質スコリアといいます。表面にはねじ れたようなしわがあり、肉眼で緑色のきらきらした鉱物が観察できます。

玄武岩の顕微鏡観察

 石基部は、主に斜長石の細粒柱状結晶(長軸およそ0.1mm)と細粒カンラン石、ガラス質部から構成されます。顕微鏡下でアルカ リ長石は確認できませんでした。石基斜長石の配列はほぼランダムです。

 斑晶は少ないですが、カンラン石、単斜輝石、斜長石といった鉱物が見られました。右上写真のように、カンラン石斑晶にはきれいな 自形面が発達しており、玄武岩質の包有物(melt pocket*)があります。右上の青いカギ型結晶を見ると、カンラン石が成長しながらマグマを取り込む様子が想像できます。斑晶の斜長石は短冊状結晶の 集合体を形成しています(右下写真)。

 斑晶の光学的な特徴から、カンラン石はMgに富んでおり、斜長石はCaが多くNaやKが少ない化学組成だと推定されます。

(*) melt pocketという用語は正確でないかもしれません。



マントルの欠片?

 右の写真も同じサンプルの薄片写真です。ハワイの玄武岩には斑晶に混ざって、稀にこのような結晶集合体がみつかります。右の例で は、単斜輝石(Cpx)を中心とし、カンラン石(Ol)と斜方輝石(Opx)を伴っています。斑晶とは異なり、結晶は他形で互いに直線状境界で接していま す。マントルの主要鉱物で構成される、この結晶集合体は、おそらく、ハワイ島の地下深くのマントル物質がマグマに取りこまれた、捕獲岩片(mantle xenolith)であろうと考えられます。マントルの小さな小さな欠片です。

(注:中央の黒い領域は薄片作成時に岩石が失われています。)



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作成者:水上 知行
金沢大学 地球学コース