平成19年能登半島地震 墓石倒壊率調査結果

第2報

金沢大学 能登半島地震断層調査グループ

 

2007年03月30日作成,2007年04月13日更新

 

本グループが発見した地表断層 伝言板 石渡ページ 石渡研究室ページ 地球学科ページ

産業技術総合研究所による海岸の隆起・沈降などに関する調査結果(4月3日)

金沢大学理学部地球学科グループによる海岸の隆起・沈降調査結果(4月12日)

関野鼻(ヤセの断崖)付近の海岸の隆起に関する記事は北國新聞4月3, 4, 5日の朝刊にも載っています


 

金沢大学能登半島地震断層調査グループ 墓石転倒率調査結果

調査日:2007年3月27・28日(地震発生:3月25日午前9時42分)

金沢大学能登地震断層調査グループ
石渡 明(教授)●
平松良浩(助教授)
小泉一人(大学院生)●
土橋広宣(同)●
菅谷勝則(同)
田中敬介(同)
山崎 亮(4年生)○
吉武直哉(同)○
原 香織(同)○
荒田孔明(同)○
(●墓石調査の主要な貢献者,○墓石調査従事者)

 墓石の転倒率は,地震被災地の各地点における地震の揺れの強さを示すのに便利な指標であり,簡単に計測できるので速報性にも優れています.

 我々は能登半島の門前ー輪島−七尾−羽咋に囲まれる地域の寺院や共同墓地22箇所で計測を行いました.その結果を添付図に示します.

 50%以上の転倒率を示す墓地は富来から門前に至る西海岸沿いに集中していることがわかりました.特に倒壊率100%の笹波の墓地や80%以上の門前の墓地では,「倒壊」というよりも「破壊」と言うべき惨状でした.一方,これらの地域と同様に負傷者や全壊・半壊家屋が出た輪島(死者1名)や穴水では墓石の転倒率が低く,地震の揺れが比較的小さかったことがわかりました.穴水・羽咋・七尾では転倒率0%の墓地もありました.

 門前ー輪島の線より北側ではまだ計測値がありませんが,ヘリコプターから海岸の急斜面の崩壊状況を観察したところ,崩壊は富来−深見(門前西方の海岸)の間と輪島周辺に限られ,両地域の中間の猿山岬付近から輪島北西方にかけては,地形が急峻であるにもかかわらず,ほとんど海岸の崩壊が見られません.つまり,門前−輪島の線より北側では地震の揺れが比較的小さかったと考えられます.つまり,門前で発見された断層の上とその延長上およびその南側で揺れが強く,特に震源に近い西海岸で揺れが強かったと考えられます.

 新潟県中越地震では数100箇所で墓石の転倒率調査が行われており,この調査は一般の人でも簡単・正確に計測できるので,更に多数の場所から墓地の墓の全数と倒壊数のデータが寄せられることを期待します.

 末筆ではありますが,この地震によって被災された方々と,大切なお墓に損壊を被った方々に,心からお見舞いを申し上げます.

第2報 追記

 4月1日に石渡 明と小泉一人が断層の北側と輪島−穴水より東側の地域で墓地12箇所の墓石倒壊率調査を行いました.前回と合わせて,調査した墓地は計35地点になりました(下図).今回,断層の北側で調査した4地点のうち,皆月では70%の倒壊率でしたが,他の3地点は0〜10%の倒壊率で,断層の北側では比較的地震の揺れが小さかったことがわかりました.輪島−穴水より東側の地域ではいずれも倒壊率が0〜10%で比較的揺れは小さかったようですが,宇出津(下図で最も東寄りの地点)では20%の墓石が倒壊した墓地があったようです(和尚さんの話に基づく.既に修復されていて確認できなかった).宇出津で神社の石灯篭が倒れている写真が新聞に載っており,この地点である程度の揺れがあったことは確かです.これまでの調査から,墓地の半数以上の墓石を転倒させるような短周期の強い揺れが襲った地域は,南北25 kmにわたる富来〜皆月間の能登半島西海岸沿いに限られることがはっきりしました.


文責: 石渡 明

 

 

輪島市門前町 総持寺祖院 亀山墓地の惨状 その1

 

輪島市門前町 総持寺祖院 亀山墓地の惨状 その2
 


この調査結果に関する記事は,2007年3月30日の朝日新聞石川版(28ページ)左下および北國新聞4月1日朝刊に掲載されました.

 

以上