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タコブネ(地学団体研究会北陸支部連絡紙)第2巻、第1号 1997年12月15日発行

事務局:920-1192 金沢市角間町 金沢大学理学部地球学教室内 Tel:076-264-5724
責任者:石渡 明 (支部年会費500円:郵便振替口座 00790-4-12164 名義人:石渡 明)
Fax:076-264-5746 e-mail:geoishw@kenroku.ipc.kanazawa-u.ac.jp Nifty:GDH01456

A.講演会・支部総会・忘年会の報告

日時: 1997年11月29日15:00〜、福井市立自然史博物館にて
出席者:安野敏勝、松山幸弘、中川登美雄、梅田美由紀、石渡 明、上島雅人、
田代陽子、渡辺弘明、斎藤大地(敬称略)。
【講演会】
中川登美雄氏、「福井県丹生山地の新第三系における古環境の変遷と貝化石群集」
これは、氏が博士論文発表の練習を兼ね(?)、コンピュータを駆使した美しい図表類をふんだんに用いて行なった、楽しい講演でした。中新世の暖かい気候のもとで丹生山地に発達したマングローブの様子や、周囲の激しい火山活動による噴出物が多量に堆積したために、浅い海の環境が長期間保持されたことなどが、層序と貝化石群集に関する詳しいデータによって示されました。

【支部総会】
1.そくほう問題(地質学会に対する地団研の謝罪の是非)に関しての、北陸支部全国運営委員、後藤道治氏からの報告(ファクスによる)。
[要旨]:日本地質学会の評議員会を傍聴した地団研会員が、「そくほう」に日本地質学会を批判する意見を発表したことに対し、日本地質学会が地団研に抗議した。地団研の全国運営委員会はこれについての対応を協議し、会長名で日本地質学会に謝罪文を送った。しかし、会員の意見を十分に集約しないまま謝罪を実行したことは早計であったとする意見が多数「そくほう」に寄せられている。今後は全国運営委員会の議論を支部に持帰り、さらに議論を重ねて決定していく努力が重要であると再確認した。この問題については、1998年の山陰総会で結論を出す方向で進める。

2.支部会費納入について(事務局からの提案)
事務局:「1992年以前のように、支部会費1年間500円を徴収して、通信連絡費などに当てたい。支払わない人には、支部からの連絡は行なわないことにしたい。」
参加者:「最近のように、参加した人のカンパに頼って活動しているのは、健全な状態ではない。事務局の都合のいいようにやってもらってかまわない。」(下記B参照)
なお、北陸支部には、地団研本部への会費未納による除籍対象者はいないとのことです(後藤委員の報告).

3.「北陸の自然をたずねて」編集・執筆計画について(事務局からの提案)
下記Eのような提案の概要が事務局から説明され、計画を進める方向で了承された。ただし、過去の経験から、いろいろな困難があり得るという指摘があった。

【忘年会】 11月29日18:00から、福井市内の「いっぷく」にて。8人参加。
この店独特の、山芋を使った鉄板焼などで舌鼓を打ちながら、楽しく飲みました。
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※本号は、支部会費納入の有無にかかわらず、北陸支部会員と連絡会員(地団研会員ではないが、支部からの連絡を望む方)の全員およびその他の若干の関係者に発送しました。しかし、次号からは支部会費を納入された方のみに発送いたします。

B.会計報告と支部会費納入のお願い

【収入】
05/24 支部総会(金沢)懇親会でのカンパ 7,157.
11/29 支部総会(福井)で納入された支部会費(1000x4+2000) 6,000.
12/04 支部会費繰越金 (後藤さんから引き継ぎ) 1,489.
12/04 全国運営委員派遣旅費繰越金( 〃 ) 19,329.
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12/15 総計 33,975.
(上記の他に、105度数のテレホンカード2枚(未使用)や封筒、葉書など引き継ぎ)

【支出】
11/10 支部総会(福井)連絡用葉書(100枚) 5,000.
12/05 大野忠廣氏(連絡会員)逝去弔電 900.
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12/15 総計 5,900.
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12/15 差引残高 28,075.

【お願い】
支部会費2年分1000円(または4年分2000円)を、郵便振替で00790-4-12164 石渡 明
までお送り下さい。領収書は発行しませんので、振替受領書を保存して下さい。

C.会員の広場
【連絡】以下の方から事前に総会欠席の連絡がありました(敬称略)。
かせ野義夫・山田一雄・竹内清和・田賀秀子・赤羽久忠・後藤道治・金子一夫
また、富山の太知 誠氏への連絡が、転居先不明で戻ってきました。どなたか新住所を
ご存じの方は、事務局までお知らせ下さい。
【おめでた】会員の金沢大学院生、辻森 樹君が10月に結婚されました。
【お悔やみ】長年富山県の地学教育の振興に尽力され、ご高齢にもかかわらず地団研北陸支部の活動に積極的に参加されてきた富山県魚津市の大野忠廣さんが12月4日に逝去されました。6日にご葬儀が行われ、赤羽久忠会員が参列しました。事務局から弔電をお送りしました。謹んでご冥福をお祈りいたします.

D.北陸支部 秋の巡検報告
 私たちは11月30日に「南条山地北端に分布する超丹波帯相当層」と「美濃帯南条山地中生界を覆う後期漸新世礫岩層中の正珪岩礫」(福井市立自然史博物館の梅田美由紀氏案内)の巡検に行ってきました。当日は、北陸のこの時期には珍しく、曇り時々晴れ、たまににわか雨が降るという、なかなかの天気に恵まれたものとなりました。
 まず、最初に超丹波帯相当層に向かいました。露頭は林道を作るために切り通してから、まだ3〜4年というにもかかわらず、かなり風化、侵食の激しいものでした。岩層は、砂岩・頁岩の互層がほとんどで、部分的に薄い(2-5cm厚)珪質頁岩〜シルト岩が挟まれていました。この露頭を見ながら、「丹念にサンプリングをしたからこそ、二畳紀放散虫の化石を発見することができたんだろうな」と思いました。
 続けて、私たちは越前海岸に向かって移動し、正珪岩礫の見学に行きました。ここでは、石渡先生に、「こんなにはっきりとした、正珪岩の食い違い礫は滅多に取れないよ」と言われて、思わず夢中になって探してしまいました。正珪岩礫がくいちがうほどの力って・・・と、ふと考えてみましたが、ちょっと想像できませんでした。どうやってこんな地層ができるのか、本当に不思議です。頂いた論文(梅田,1997;地球科学,51,199-)を読めばいいことなんですが。
 今回の巡検では、久しぶりに地質見学をして、足元の奥深くでは、さまざまな力が微妙な具合に関わり合っていて、地球は運動しているということを、つくづく感じました。今後はいろんな地質を活発に見ていきたいと、改めて思いました。

(北陸支部、金沢大学院生、田代陽子)
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今回の講演会・総会・忘年会・巡検では、福井市自然史博物館の梅田美由紀氏に全面的にお世話になりました。ありがとうございました。さて、1997年も押し詰まって参りました。皆様お体に気をつけて、よいお正月をお迎え下さい。(事務局)


E.「北陸の自然をたずねて」(築地書館) 執筆・編集計画の提案
(地学団体研究会北陸支部1998年度事業) 地団研北陸支部事務局 石渡 明

【趣旨】
かせ野義夫氏編著「日曜の地学6 北陸の地質をめぐって」(築地書館)は、邑本順亮氏ほか多数の著者が執筆して1979年に出版され、以後何回か版を重ねてきました。北陸の地質巡検コースのうち、最もポピュラーなものを厳選して、適切な解説を施した本書は、多くの読者に親しまれ、重宝されてきました。この本が、北陸の地質を学ぶ学生・生徒、そしてそれを指導・引率する教師にとって、果たして来た大きな役割を思うとき、先輩方の努力に感謝と尊敬の念を禁じ得ません。しかし、この本で紹介されている露頭には、すでにコンクリートを吹きつけられて観察できなくなってしまったものや、都市開発・道路工事などで状況が全く変わってしまった場合も多く、更に残念なことに、この本は数年前に絶版になり、現在では品切れで全く手に入らない状態になってしまいました。そこで、この本の出版後約20年間の北陸の地質研究の進歩を踏まえ、次の世代の手によって、装いも新たに北陸の自然見学案内書を再び世に送ろうというのが、この計画の趣旨です。

【今後の進め方】
12月中に、この計画書を、全北陸支部会員及び北陸の自然(地質、岩石、鉱物、植物、動物、環境など)に関心をもつ科学者や教育者に送り、提案・意見・執筆希望などを募ります。その結果をもとに、2月末頃に金子(富山県立山博)、赤羽・後藤(富山市科文セ)、石渡(金沢大)、梅田(福井市自然史博)などを中心にして、この本全体の構成を考え、執筆者を組織するため、第1回目の編集委員会を開きます。なお、築地書館は大変乗り気です。

ご意見を積極的に事務局にお寄せ下さい。

----------------------------------参考資料----------------------------------
【旧版の項目と執筆者】
「日曜の地学6 北陸の地質をめぐって」(1979)目次と執筆者
0 まえがき 0 かせ野
1 北陸の地形と地質 2 邑本
「福井県」
2 青葉山周辺(西三松〜音海) 11 鳥居
3 小浜湾周辺(大島半島(待ちの山)・内外海半島) 16 竹中
4 南条山地と敦賀周辺 25 川端・伊藤
5 東尋坊と三里浜 33 水野・吉沢・組頭
6 越前海岸(梅浦から浜住まで) 43 中川・安野
7 足羽川流域 51 田中
8 九頭竜川上流地域(谷戸口・皿貝・箱ヶ瀬) 57 伊藤(一)
「石川県」
9 橋立海岸と南加賀丘陵 63 野村
10 白山と手取川流域 71 関戸
11 金沢周辺 89 松浦
12 宝達山北側(志雄周辺) 105 発田・松浦
13 七尾周辺 110 松浦・端山
14 能登金剛と千里浜 122 関戸
15 輪島と曽々木海岸 127 松浦・安江
16 珠洲 134 松浦・清水・平山・関戸
「富山県」
17 氷見海岸・雨晴・二上山 148 松島・邑本・亀遊
18 八尾と神通川流域 163 桐井
19 呉羽山と射水丘陵 172 菊川・邑本
20 立山 182 邑本
21 黒部川流域 192 大野
22 境川流域 199 森
野外見学の手引き 206 ?
あとがき 210 編集委員
さくいん 212 (〜215)

【旧版の図表】
表紙 巡検コース位置図
見開き 北陸の地質図
裏表紙 北陸の代表的な地層・岩石とおもなできごと

【旧版の囲み記事】
1 三方五湖 22 下中
2 北陸トンネル 30 伊藤(政)
3 福井平野の地盤 41 坂本
4 手取川扇状地 87 関戸
5 邑知地溝帯 103 松浦
6 富山湾の海底地形 146 邑本
7 氷見地方の地すべり 162 松島
8 新たに発見されたナウマン象のなかまの歯の化石 170 赤羽
9 魚津の埋没林 180 邑本
10 立山の気象 189 邑本
11 飛騨変成岩類 198 邑本
12 青海のカルスト地形 203 森

【旧版の編集委員】
かせ野義夫・川端一男・亀遊寿之・関戸信次・松浦信臣・松島 洋・水野閲映・
邑本順亮(事務局)

【新版に加える内容の例】
主として旧版出版以後に起こった事件や明らかになった新事実で,本文または囲み記事として適当なものを,思い付くままに並べた.

「福井県」
1 大島半島の夜久野オフィオライト
2 荒島岳コールドロン(同心円状の火山・深成複合岩体,カルデラ火山の深部構造)
3 丹生山地古第三系の正珪岩の食違い礫
4 ジュラ紀と二畳紀の付加体(丹波帯と超丹波帯)
5 東尋坊のピジョン輝石安山岩
6 越前海岸岩盤崩落事故(1989)
7 福井平野東縁活断層と福井地震(1948)
8 ナホトカ号重油流出事故と三国海岸への船首部分の漂着(1997)
9 越前海岸の第三紀層中の哺乳類・爬虫類・魚類・貝類化石
10 手取層群の恐竜化石
11 九頭竜火山列と白山火山列の鮮新〜更新世火山
「石川県」
12 根上隕石の落下 (1995)
13 鷲走ヶ岳の月長石流紋岩
14 我谷のショショナイト岩脈
15 金沢市直下の森本活断層と寛政金沢地震(1799)
16 能登半島沖地震 (1993)
17 能登半島のマグネシア安山岩と高カリウム安山岩
18 能登の珪化木と子ぶり石(仏石)
19 白山の柳谷湧水のバイオマット
20 白山麓目附谷の泥質片麻岩
21 大桑層の化石が示す氷河性海面変動
「富山県」
22 富山市直下の呉羽山断層
23 飛越地震と大鳶山崩れによる常願寺川の洪水(1858)
24 富山湾の蜃気楼
25 神岡鉱山の廃液とイタイイタイ病
26 立山の玉滴石と噴泉塔
27 手取層群の恐竜足跡化石
28 飛騨変成岩中の交代作用:伊西岩の成因
29 宇奈月の十字石と中圧型変成帯