Hakusan Project−白山火山のマグマ供給系と噴火プロセス

(1)17世紀の最新期噴火のマグマプロセス

山頂南麓から採取した最新期の噴石について,鉱物組織・組合せ,化学組成及び累帯構造を解析し,以下の噴火プロセスを推定した:

白山火山のマグマ溜まり:地殻の中部及び浅部の2カ所にある。
1)地殻中部マグマ溜り:地下12 km付近
2)地殻浅部マグマ溜り:地下3-4 km付近

中部マグマ溜りは800°Cの結晶マッシュという状態で,通常はほとんど固化している。この状態では結晶度,粘性率ともに高く,事実上固体としてふるまうために,噴火能力はない。

噴火の準備過程:
1.中部マグマ溜りに約1100°Cの安山岩質マグマが流入し,固化しかけたデイサイト質マグマ溜りを加熱し,部分的に融解することにより,噴火能力を獲得。
2.加熱による温度上昇によって,マグマ中の水の溶解度が下がり,発泡(二次沸騰)。
3.発泡によりマグマ溜りの圧力が上昇し,マグマ溜りの天井を破壊し,マグマが上昇を開始。
4.マグマは地下3-4 kmまで上昇し,そこで一旦停止し,浅所マグマ溜りを形成。

噴火のトリガー:
1.浅所マグマ溜りに1250°Cの玄武岩質マグマが供給された。
2.供給された玄武岩質マグマによって浅所マグマ溜りの温度が上昇し,マグマが再度二次沸騰を起こした。
3.マグマ溜りの圧力が増大し,ついに噴火に至った。

議論:
*今回解析した最新期の噴出物は,噴火の仕方,鉱物組合せ・組成が過去1万年間の新白山火山の噴出物と共通しており,本質的には同様の過程が繰り返されてきたと考えられる。
*これらの2つのマグマ溜まりは,地震波による観測によって推定された地下浅所と深部マグマ溜まりの存在とも整合的である。

結論:近い将来発生する噴火も,最新期噴火と同様の経過を辿る可能性がある。

北國新聞 平成29年9月7日付朝刊

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